入社一年目が知っておきたい「コンピテンシー」〜ロミンガー67のコンピテンシーで自分の強みと弱みを客観的に知る方法〜

  1. まえがき
  2. 第1章:コンピテンシーって何? 仕事で成功する人の共通点
    1. コンピテンシーの基本概念
    2. なぜ今コンピテンシーが注目されているのか
    3. 入社一年目にコンピテンシーを知る意義
    4. ロミンガーの67コンピテンシーとは
    5. 「強調されすぎ」の概念について
    6. コンピテンシーと業績の関係性
    7. この章のポイント
  3. 第2章:自分を知る・伸ばす コンピテンシー
    1. 自己理解の重要性
    2. 自己啓発への姿勢
    3. 個人的な事柄の開示
    4. 自己学習の習慣化
    5. キャリアに対する積極性
    6. ワーク・ライフ・バランスの維持
    7. 素早く習得する力
    8. 技術の習得
    9. 時間管理
    10. この章の実践ポイント
  4. 第3章:人間関係を築く コンピテンシー
    1. 親しみやすさの重要性
    2. 思いやりの実践
    3. 傾聴力の磨き方
    4. 対人関係における手腕
    5. 上司との関係構築
    6. 同僚との関係構築
    7. 直属の部下に対する配慮
    8. 部下への対峙
    9. 直属の部下に対する公正さ
    10. 人を理解する
    11. 人の適切な評価
    12. この章の人間関係の要点
  5. 第4章:チームで成果を出す コンピテンシー
    1. 効果的なチーム作りの基本
    2. 人への指示
    3. 部下の育成
    4. 権限委譲
    5. 人への喚起
    6. コンフリクト・マネジメント
    7. 仕事の管理・測定
    8. 採用と配置
    9. ダイバーシティ・マネジメント
    10. この章の実践ポイント
  6. 第5章:問題解決と意思決定の コンピテンシー
    1. 行動指向の重要性
    2. 不確実な事態への対応力
    3. 問題解決能力の磨き方
    4. 決断の質を高める
    5. タイムリーな決断
    6. 優先順位の設定
    7. 冷静沈着さの保ち方
    8. 忍耐力の育て方
    9. 矛盾への対応力
    10. この章の実践ポイント
  7. 第6章:ビジネス感覚を磨く コンピテンシー
    1. ビジネスに対する眼識・洞察力
    2. 職務的・専門的スキル
    3. 顧客志向の実践
    4. 結果を出すための意欲
    5. 組織化力の向上
    6. 計画性の磨き方
    7. 仕組みを使った管理
    8. TQM/再構築能力
    9. この章の実践ポイント
  8. 第7章:組織で生き抜く コンピテンシー
    1. 組織ダイナミクスに対する俊敏性
    2. 政治的手腕の磨き方
    3. 経営上層部に対する落ち着いた対応
    4. 管理者としての度胸・勇気
    5. 誠実さと信頼性の構築
    6. 倫理観と価値観の重要性
    7. 交渉力の磨き方
    8. 自立性・独立性の育て方
    9. 情報の提供の重要性
    10. この章の実践ポイント
  9. 第8章:未来を創る コンピテンシー
    1. 創造性の育み方
    2. イノベーション・マネジメント
    3. 戦略的俊敏性の磨き方
    4. ビジョンと目的の管理
    5. 広い視野の育て方
    6. プレゼンテーション・スキル
    7. 書面でのコミュニケーション
    8. ユーモアの活用法
    9. この章の実践ポイント
  10. おわりに

まえがき

新社会人の皆さん、入社おめでとうございます。期待と不安が入り混じる新しい環境で、これから様々な経験を積んでいくことでしょう。

私がビジネスパーソンとして成長していく中で、最も役立ったのが「コンピテンシー」という考え方でした。コンピテンシーとは、仕事で成功するために必要な行動特性のこと。単なるスキルや知識ではなく、「どのように行動するか」という点に焦点を当てた概念です。

この本では、ビジネスの世界で広く認知されている「ロミンガーの67コンピテンシー」を中心に、入社一年目の皆さんが知っておくべきコンピテンシーについて解説します。コンピテンシーを理解することで、自分の強みと弱みを把握し、効果的に成長するための道筋が見えてくるでしょう。

「なぜ自分は評価されないのだろう」「どうすれば周囲から信頼されるのだろう」「キャリアをどう築いていけばいいのだろう」—こんな悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。コンピテンシーを学ぶことで、こうした疑問への答えが見つかるはずです。

この本が、皆さんのキャリア形成の一助となれば幸いです。さあ、コンピテンシーの世界へ一緒に踏み出しましょう。

第1章:コンピテンシーって何? 仕事で成功する人の共通点

コンピテンシーの基本概念

「コンピテンシー」という言葉を初めて聞いた方も多いかもしれません。簡単に言えば、仕事で高い成果を上げる人に共通する行動特性のことです。単なる知識やスキルではなく、それらを実際の行動に移す際の「やり方」や「姿勢」を含む概念です。

例えば、同じ知識を持っていても、それを活かす行動パターンによって成果は大きく変わります。プレゼンテーションのスキルを持っていても、相手の反応を見ながら臨機応変に対応できる人と、準備した内容を一方的に話すだけの人では、効果に大きな差が生まれるでしょう。

コンピテンシーの考え方が生まれたのは1970年代のアメリカ。心理学者のデビッド・マクレランドが「なぜ同じ学歴や知能を持つ人でも、仕事の成果に差が出るのか」という疑問から研究を始めました。彼は、高業績者に共通する行動パターンを分析し、それを「コンピテンシー」と名付けたのです。

なぜ今コンピテンシーが注目されているのか

現代のビジネス環境は、かつてないほど変化が激しくなっています。テクノロジーの進化、グローバル化、働き方の多様化など、私たちを取り巻く環境は日々変化しています。そんな中で、単なる知識やスキルだけでは通用しなくなってきているのです。

例えば、AIの発達により、知識を暗記することの価値は低下しています。代わりに、その知識をどう活用するか、チームでどう協力するか、変化にどう対応するかといった能力が重視されるようになりました。これらはまさにコンピテンシーの領域です。

また、日本企業の多くが年功序列から成果主義へと評価制度を変えつつある中で、「何ができるか」だけでなく「どのように行動するか」が評価の重要な要素となっています。コンピテンシーは、そうした評価の物差しとしても活用されているのです。

入社一年目にコンピテンシーを知る意義

「入社したばかりの今、コンピテンシーなんて難しいことを考える必要があるの?」と思うかもしれません。しかし、キャリアの早い段階でコンピテンシーを意識することには、大きなメリットがあります。

まず、自分の強みと弱みを客観的に把握できるようになります。「なぜ自分はこの仕事が得意なのか」「なぜあの人は周囲から信頼されているのか」といった疑問に対して、コンピテンシーの観点から分析できるようになるのです。

次に、成長の方向性が明確になります。漠然と「もっと頑張ろう」と思うのではなく、「このコンピテンシーを伸ばそう」という具体的な目標を持つことで、効率的に成長することができます。

さらに、上司や先輩とのコミュニケーションも円滑になります。「もっと主体性を持って」と言われても、具体的に何をすればいいのかわからないことがありますよね。コンピテンシーの言葉を知っていれば、「行動指向のコンピテンシーを高めるために、どんな行動を取ればいいですか」と具体的に質問できるようになります。

ロミンガーの67コンピテンシーとは

ビジネスの世界では様々なコンピテンシーモデルが存在しますが、中でも広く知られているのが「ロミンガーの67コンピテンシー」です。これは、マイケル・ロミンガーとロバート・エイカーが開発したモデルで、ビジネスリーダーに必要な67の行動特性をリスト化したものです。

ロミンガーのコンピテンシーモデルの特徴は、単に「こういう行動が望ましい」というだけでなく、各コンピテンシーについて「強調されすぎた場合のリスク」も示している点です。例えば、「行動指向」というコンピテンシーは重要ですが、強調されすぎると「十分な分析をせずに解決策を推し進める」というリスクがあります。

また、このモデルは研究に基づいており、実際の高業績者の行動を分析して作られています。そのため、理論的な裏付けがあり、実践的な示唆に富んでいるのです。

ロミンガーの67コンピテンシーは、「戦略的スキル」「業務スキル」「勇気」「影響力」「個人的・対人的効果性」などのカテゴリーに分類されています。これらを全て覚える必要はありませんが、自分に関係の深いコンピテンシーを意識することで、日々の行動を改善するヒントになるでしょう。

「強調されすぎ」の概念について

ロミンガーのコンピテンシーモデルの興味深い点は、各コンピテンシーについて「強調されすぎた場合のリスク」も示していることです。これは、どんな良い特性も、行き過ぎると弱点になり得ることを教えてくれます。

例えば、「顧客志向」というコンピテンシーは重要ですが、強調されすぎると「顧客の要望に過剰に対応する」「理不尽な顧客の要求に対応するために、実績のあるプロセスやスケジュールを変更しようとする」というリスクがあります。

また、「創造性」というコンピテンシーも価値がありますが、強調されすぎると「わずかばかりの生産性改善のアイディアに夢中に取り組み、部下の時間を浪費する」「同時にあまりにも多くの事に関わる」といった問題が生じる可能性があります。

このように、コンピテンシーは「多ければ多いほど良い」というものではなく、バランスが重要なのです。自分の強みを活かしつつも、それが行き過ぎないように注意することが、真の意味でのコンピテンシー開発と言えるでしょう。

コンピテンシーと業績の関係性

コンピテンシーが高ければ、必ず業績も高くなるのでしょうか?実はそう単純ではありません。コンピテンシーと業績の関係は、次のように考えるとわかりやすいでしょう。

コンピテンシーは「業績を上げるための行動特性」であり、業績そのものではありません。例えば、「問題解決能力」というコンピテンシーが高くても、その能力を発揮する機会がなければ、業績には直結しないかもしれません。

また、業績は環境要因にも左右されます。どんなに優れたコンピテンシーを持っていても、市場環境が厳しければ業績は上がりにくいでしょう。

しかし、長期的に見れば、高いコンピテンシーを持つ人は、様々な環境の中でも安定して高い業績を上げる傾向があります。なぜなら、環境が変わっても、適応し、学び、成長するための行動特性を持っているからです。

入社一年目の皆さんにとって重要なのは、短期的な業績だけにとらわれず、長期的な成長につながるコンピテンシーを意識的に高めていくことです。それが、将来の高い業績につながる基盤となるでしょう。

この章のポイント

コンピテンシーとは、高い成果を上げる人に共通する行動特性のことです。単なる知識やスキルではなく、それらを実際の行動に移す際の「やり方」や「姿勢」を含む概念です。

現代のビジネス環境では、変化への対応力や協働する力が重視されており、コンピテンシーの考え方がますます重要になっています。

入社一年目からコンピテンシーを意識することで、自分の強みと弱みを客観的に把握し、効率的に成長することができます。

ロミンガーの67コンピテンシーは、ビジネスリーダーに必要な行動特性を網羅的にリスト化したもので、各コンピテンシーについて「強調されすぎた場合のリスク」も示しています。

コンピテンシーは「多ければ多いほど良い」というものではなく、バランスが重要です。自分の強みを活かしつつも、それが行き過ぎないように注意することが大切です。

短期的な業績だけにとらわれず、長期的な成長につながるコンピテンシーを意識的に高めていくことが、将来の高い業績につながる基盤となります。

コンピテンシーは単なるスキルではなく、成功につながる行動特性です。次章からは、具体的なコンピテンシーについて詳しく見ていきましょう。

第2章:自分を知る・伸ばす コンピテンシー

自己理解の重要性

ビジネスパーソンとして成長するための第一歩は、自分自身を正確に理解することです。「自己知識」というコンピテンシーは、自分の強み、弱み、機会、限界を認識する能力を指します。

多くの新入社員が陥りがちな罠は、自分を過大評価するか、逆に過小評価することです。例えば、学生時代に培った能力が、そのままビジネスの場で通用すると思い込んでしまったり、逆に「自分には何もできない」と委縮してしまったりすることがあります。

自己知識を高めるためには、まず客観的なフィードバックを求めることが大切です。上司や先輩からの評価、同期からの感想、さらには顧客からの反応など、様々な角度からのフィードバックを集めましょう。

また、自分の行動とその結果を振り返る習慣も重要です。「今日のミーティングでは何がうまくいって、何がうまくいかなかったか」「この仕事で自分が貢献できたのはどんな点か」といった振り返りを日常的に行うことで、自己理解が深まります。

自己知識が高まると、自分に合った仕事の選び方や、効果的な成長方法が見えてきます。また、自分の限界を知ることで、無理なく成長するペースを掴むこともできるでしょう。

自己啓発への姿勢

「自己啓発」のコンピテンシーは、継続的な自己改革に個人的に取り組み、また積極的に努力する姿勢を指します。入社一年目は、新しい環境に慣れることで精一杯かもしれませんが、この時期から自己啓発の習慣を身につけることが、長期的な成長につながります。

自己啓発の第一歩は、自分の成長目標を明確にすることです。「3年後にはこんな仕事ができるようになりたい」「このスキルを身につけたい」といった具体的な目標を持つことで、日々の学びに方向性が生まれます。

次に、学びの機会を積極的に探すことが大切です。社内の研修はもちろん、業界のセミナーや書籍、オンライン講座など、様々なリソースを活用しましょう。また、先輩社員の仕事ぶりを観察し、真似ることも効果的な学びの方法です。

自己啓発で注意したいのは、「強調されすぎ」のリスクです。自己啓発に没頭するあまり、目の前の仕事がおろそかになったり、周囲との協働を忘れたりすることがあります。バランスを取りながら、着実に成長していくことが大切です。

個人的な事柄の開示

「個人的な事柄の開示」というコンピテンシーは、自分の考えや感情を適切に共有する能力を指します。ビジネスの場では、必要以上に自分を隠したり、逆に何でも話してしまったりするのではなく、状況に応じた適切な自己開示が求められます。

例えば、チームで仕事をする際には、自分の得意分野や苦手な部分を正直に伝えることで、効率的な役割分担が可能になります。また、上司に対しては、困っていることや助けが必要なことを適切に伝えることで、必要なサポートを得られるでしょう。

一方で、プライベートな悩みや感情をすべて職場で共有する必要はありません。TPOをわきまえた自己開示が、良好な人間関係を築く鍵となります。

このコンピテンシーを高めるためには、まず自分の考えや感情を整理する習慣をつけることが大切です。そして、「この情報を共有することで、どんな効果があるか」を考えてから話すようにしましょう。

自己学習の習慣化

「自己学習」のコンピテンシーは、自分の行動や対人関係を改善するために、積極的に学び、変化する能力を指します。このコンピテンシーが高い人は、失敗から学び、常に自分を向上させようとします。

自己学習を習慣化するためのポイントは、小さな「実験」を日常的に行うことです。例えば、「今日のミーティングでは、いつもより積極的に発言してみよう」「この報告書は、前回とは違うアプローチで作成してみよう」といった小さな変化を意識的に取り入れてみましょう。

そして、その「実験」の結果を振り返ることが重要です。「うまくいったこと」「うまくいかなかったこと」「次回はどうすればもっと良くなるか」を考えることで、着実に成長していくことができます。

また、他者の行動からも学ぶ姿勢が大切です。「あの先輩はなぜこの場面でこのような対応をしたのだろう」「あの上司の話し方のどこが説得力があるのだろう」と観察し、自分の行動に取り入れていくことで、効率的に学ぶことができます。

キャリアに対する積極性

「キャリアに対する積極性」というコンピテンシーは、自分のキャリアから得たいものを明確に理解し、それに向けて積極的に行動する能力を指します。入社一年目の段階から、自分のキャリアを主体的に考えることは、長期的な成長につながります。

このコンピテンシーが高い人は、「キャリアについてよく知っている」「自分で物事を起こせる」「好機を捉えて自分を売り込む」「他人任せにしない」といった特徴があります。つまり、自分のキャリアは自分で切り開くという意識を持っているのです。

例えば、入社一年目でも「この部署でどんなスキルを身につけたいか」「3年後にはどんな仕事をしていたいか」といった具体的なイメージを持ち、それに向けた行動を取ることが大切です。上司との面談で自分の希望を伝えたり、必要なスキルを身につけるための研修を自ら申し込んだりするのも、このコンピテンシーの表れです。

ただし、このコンピテンシーが「強調されすぎ」ると、「賢明でないキャリアの選択をする」「できることがわかっている慣れた領域の仕事のみを選ぶ」「野心がありすぎるように見える」「今受けている仕事に十分に注意を払わない」といったリスクがあります。目の前の仕事をおろそかにして将来のことばかり考えるのは、バランスを欠いた状態と言えるでしょう。

キャリアに対する積極性を高めるためには、まず自分の興味や強みを理解することが大切です。そして、業界や職種についての情報を積極的に集め、自分のキャリアの選択肢を広げていきましょう。また、社内外のロールモデルとなる人を見つけ、その人のキャリアパスを参考にするのも効果的です。

ワーク・ライフ・バランスの維持

「ワーク・ライフ・バランスの維持」というコンピテンシーは、仕事と私生活のバランス意識を保ち、一方が他方を凌駕しないようにする能力を指します。入社一年目は仕事に慣れるために長時間働いてしまいがちですが、長期的なキャリアを考えると、このコンピテンシーは非常に重要です。

このコンピテンシーが高い人は、「一元的な見方をしない」「両方に参加する方法を知っている」「両方の側の要望がわかる」といった特徴があります。つまり、仕事も私生活も大切にし、両立させる方法を知っているのです。

例えば、効率的な仕事の進め方を工夫して定時に帰るようにしたり、休日はしっかり休んでリフレッシュしたりすることで、仕事のパフォーマンスも上がります。また、プライベートでの経験や人間関係が、仕事での視野を広げることもあるでしょう。

ただし、このコンピテンシーが「強調されすぎ」ると、「仕事や私生活を大幅に変える必要があるときに、柔軟性が足りない」「他を犠牲にしてまで、一つのことを調整しようとしない」「一時的な不快さよりもバランスが取れていることを重視する」といったリスクがあります。時には仕事に集中する時期や、逆に私生活を優先する時期があってもいいのです。

ワーク・ライフ・バランスを維持するためには、まず自分にとっての「バランス」を定義することが大切です。人によって理想的なバランスは異なります。また、日々の時間の使い方を見直し、優先順位をつけることで、限られた時間を効率的に使う習慣をつけましょう。そして、職場の制度(フレックスタイム、テレワークなど)を積極的に活用することも効果的です。

素早く習得する力

「素早く習得する力」というコンピテンシーは、新たな問題に直面したときに素早く学ぶ能力を指します。ビジネス環境が急速に変化する現代では、このコンピテンシーはますます重要になっています。

このコンピテンシーが高い人は、「くじけず、あらゆる方面を学ぶ人である」「変化を受け入れる」「チームの改善のために成功と失敗を分析する」「解決策を探していろいろ試してみる」「良く知らない仕事への取り組みを楽しむ」「物事の本質を素早く把握する」といった特徴があります。つまり、新しいことを学ぶことに対して前向きで、効率的に学習できるのです。

例えば、新しいシステムやツールを導入されたとき、マニュアルを読むだけでなく実際に触ってみたり、詳しい人に質問したりして、短期間でマスターしようとします。また、失敗しても「次はこうしよう」と改善点を見つけ、学びに変えることができます。

ただし、このコンピテンシーが「強調されすぎ」ると、「他人を置き去りにする」「自分の変化が求められている問題で他人を失望させる」「あまりにも頻繁に物事を変更する傾向がある」「透明性を、決断力がない、優柔不断である、と解釈する」といったリスクがあります。変化のスピードが速すぎると、周囲がついていけなくなることもあるのです。

素早く習得する力を高めるためには、まず学習の方法自体を学ぶことが大切です。例えば、新しい情報を既存の知識と関連付けたり、実践を通じて学んだりすることで、効率的に習得できます。また、失敗を恐れずに新しいことに挑戦する姿勢や、他者から学ぶ謙虚さも重要です。さらに、学んだことを整理し、振り返る習慣をつけることで、学習の定着率が高まります。

技術の習得

「技術の習得」というコンピテンシーは、技術的なことを素早く理解し、新しい技能や知識を習得する能力を指します。特に、テクノロジーの進化が著しい現代では、このコンピテンシーは非常に重要です。

このコンピテンシーが高い人は、「新しい技能や知識を習得することができる」「新しい産業、企業、製品などの知識、技術的な知識をうまく習得できる」「技術習得コースやセミナーで良い成績を収める」といった特徴があります。つまり、新しい技術や知識を効率的に学び、実践に活かせるのです。

例えば、新しいソフトウェアやツールが導入されたとき、マニュアルを読むだけでなく、実際に使ってみたり、オンライン講座で学んだりして、短期間でマスターしようとします。また、業界の最新動向にアンテナを張り、自分のスキルセットを常に更新しています。

ただし、このコンピテンシーが「強調されすぎ」ると、「学習はするが実際に行動しない」「実際に活用することを顧みず、学習そのものを強調しすぎる」「あまりにも学究的すぎると見られる」「飲み込みの悪い人とは折り合いが良くない」といったリスクがあります。知識を得ることが目的化してしまい、実践に活かせないこともあるのです。

技術の習得力を高めるためには、まず自分の学習スタイルを理解することが大切です。視覚的に学ぶのが得意か、実践を通じて学ぶのが得意か、など自分に合った学習方法を見つけましょう。また、学んだことをすぐに実践する機会を作ることで、知識の定着率が高まります。さらに、同じ技術を学んでいる仲間と情報交換したり、教え合ったりすることも効果的です。

時間管理

「時間管理」というコンピテンシーは、自分の時間を効果的かつ効率的に使う能力を指します。限られた時間の中で成果を出すためには、このコンピテンシーは非常に重要です。

このコンピテンシーが高い人は、「時間を重要視する」「より重要な優先順位の事柄に努力を集中する」「他人より短い時間で物事を成し遂げる」「より広範な活動に参加できる」といった特徴があります。つまり、時間を資源として捉え、効率的に活用できるのです。

例えば、一日の始めに今日やるべきことリストを作り、優先順位をつけて取り組みます。また、会議の時間を守り、無駄な時間を削減することで、より多くの成果を出すことができます。さらに、集中力が高い時間帯に重要な仕事を行うなど、自分の特性に合わせた時間の使い方をしています。

ただし、このコンピテンシーが「強調されすぎ」ると、「人の話の内容や話のペースにイライラする」「一旦立ち止まって検討する時間を作らない」「親密な関係を築く時間を人に与えない」といったリスクがあります。効率性を追求するあまり、人間関係や創造性が犠牲になることもあるのです。

時間管理のスキルを高めるためには、まず自分の時間の使い方を把握することが大切です。一週間の時間の使い方を記録してみると、無駄な時間や改善できる点が見えてきます。また、タスクの優先順位をつける習慣をつけ、重要かつ緊急なものから取り組むようにしましょう。さらに、集中力を高める環境づくり(通知をオフにする、集中タイムを設けるなど)も効果的です。

この章の実践ポイント

自分を知り、伸ばすコンピテンシーは、ビジネスパーソンとしての基盤を作るものです。これらのコンピテンシーを高めることで、自分自身を効果的に管理し、継続的に成長していくことができます。

まず、自己理解を深めるために、定期的に自分の強みと弱みを振り返る時間を持ちましょう。上司や同僚からのフィードバックを積極的に求め、自分では気づかない特性を知ることも大切です。

次に、自己啓発の習慣をつけるために、月に一冊は業界関連の本を読む、週に一回はオンライン講座で学ぶなど、具体的な目標を立てましょう。小さな目標から始めて、徐々に習慣化していくことがポイントです。

また、時間管理のスキルを高めるために、タスク管理ツールを活用したり、「ポモドーロ・テクニック」(25分集中、5分休憩のサイクル)などの手法を試してみたりするのも効果的です。

そして、ワーク・ライフ・バランスを意識して、仕事と私生活のメリハリをつけましょう。例えば、週に一日は趣味の時間を確保する、休日は仕事のメールをチェックしないなど、自分なりのルールを作ることが大切です。

最後に、これらのコンピテンシーを高めるためには、継続的な実践と振り返りが重要です。日々の小さな行動の積み重ねが、長い目で見たときに大きな成長につながります。自分自身を知り、伸ばすことは、ビジネスパーソンとしての成功の基盤となるのです。

第3章:人間関係を築く コンピテンシー

親しみやすさの重要性

「親しみやすさ」というコンピテンシーは、自然体で近づきやすく、話し掛けられる特性を指します。ビジネスの場では、良好な人間関係を築くための土台となる重要なコンピテンシーです。

このコンピテンシーが高い人は、「自然体で近づきやすく、話し掛けられる」「他の人がくつろげるように更に努力する」「温かみのある、感じの良い、礼儀正しい態度でいられる」といった特徴があります。つまり、周囲の人が自分に対して心を開きやすい雰囲気を作り出せるのです。

入社一年目の皆さんにとって、親しみやすさは特に重要です。なぜなら、新しい環境で信頼関係を築くためには、まず相手に話しかけてもらえる存在になる必要があるからです。例えば、挨拶を欠かさない、笑顔を心がける、相手の目を見て話を聞くなど、小さな行動の積み重ねが親しみやすさにつながります。

ただし、このコンピテンシーが「強調されすぎ」ると、「会議中に対人関係を作るのに時間がかかりすぎる」「詰めが甘いとか、影響を受けやすいと誤解される」「好かれようとする意識があまりにも強い」といったリスクがあります。ビジネスの場では、親しみやすさと同時に、プロフェッショナルとしての信頼性も大切なのです。

親しみやすさを高めるためには、まず自分自身がリラックスすることが大切です。緊張していると、相手にも緊張が伝わってしまいます。また、相手の話に興味を持って聞く姿勢や、適度な自己開示も効果的です。さらに、相手の名前を覚えて呼ぶ、共通の話題を見つけるなど、相手との距離を縮める工夫をしましょう。

思いやりの実践

「思いやり」というコンピテンシーは、本心から周囲の人を気遣う能力を指します。単なる表面的な気遣いではなく、相手の立場に立って考え、行動することが求められます。

このコンピテンシーが高い人は、「本心から周囲の人を気遣う」「周囲の人の仕事の問題と仕事以外の問題に関心を払う」「いつでも手助けする用意ができている」といった特徴があります。つまり、相手の状況や感情に敏感で、必要なサポートを提供できるのです。

例えば、同僚が締め切りに追われている様子を見て、自分の仕事が一段落したら「何か手伝えることはある?」と声をかけたり、体調が優れない様子の人に「大丈夫?」と気遣ったりすることが、思いやりの表れです。また、相手の話をしっかり聞き、共感することも重要な思いやりの一つです。

ただし、このコンピテンシーが「強調されすぎ」ると、「協調するために、対立点を曖昧にし、丸く収める」「仮病で休んだ者には甘く、対応が不公平である」「客観性に悪影響を及ぼし、うまく立ち廻れる人間とあまりにも親密である」といったリスクがあります。思いやりが行き過ぎると、公平性や客観性が損なわれることもあるのです。

思いやりを高めるためには、まず相手の立場に立って考える習慣をつけることが大切です。「もし自分がこの状況だったら、どう感じるだろう」と想像してみましょう。また、相手の言葉だけでなく、表情や態度からも感情を読み取る観察力を養うことも効果的です。さらに、小さな親切を日常的に実践することで、思いやりの心を育てていくことができます。

傾聴力の磨き方

「傾聴力」というコンピテンシーは、注意深く実行し、積極的に相手に耳を傾ける能力を指します。単に相手の話を聞くだけでなく、相手の言葉の背景にある感情や意図を理解することが求められます。

このコンピテンシーが高い人は、「注意深く実行し、積極的に相手に耳を傾ける」「人から忍耐強く話を聞く」「自分が反対の立場であっても、他者の意見を正確に言いなおすことができる」といった特徴があります。つまり、相手の話を深いレベルで理解し、それを示すことができるのです。

例えば、相手の話を遮らずに最後まで聞く、相手の言葉を自分の言葉で言い換えて確認する、質問を通じて理解を深めるなどの行動が、傾聴力の表れです。また、言葉だけでなく、相手の表情や声のトーン、身振り手振りなどの非言語コミュニケーションにも注意を払うことが大切です。

ただし、このコンピテンシーが「強調されすぎ」ると、「話を聞くことに時間を取られすぎる」「必要な行動を避けようとする」「相手には、傾聴しているのか同意しているのかわからない」といったリスクがあります。ただ聞くだけでなく、適切なタイミングで自分の意見を述べたり、行動に移したりすることも重要なのです。

傾聴力を高めるためには、まず相手の話に集中する環境を整えることが大切です。スマートフォンを手元に置かない、目を見て話を聞くなど、集中力を高める工夫をしましょう。また、相手の話の内容だけでなく、感情にも注目することで、より深い理解につながります。さらに、「なるほど」「それで?」など、相手が話しやすくなる相づちや質問を意識的に使うことも効果的です。

対人関係における手腕

「対人関係における手腕」というコンピテンシーは、職責の上下、系列、組織の内外を問わず、あらゆるタイプの人とうまく関係を築ける能力を指します。単に人と仲良くなるだけでなく、様々な状況で効果的な人間関係を構築し、維持することが求められます。

このコンピテンシーが高い人は、「職責の上下、系列、組織の内外を問わず、あらゆるタイプの人とうまく関係を築ける」「良好な対人関係を築く」「前向きで効果的な関係を築ける」といった特徴があります。つまり、多様な人々と円滑にコミュニケーションを取り、信頼関係を構築できるのです。

例えば、初対面の人とも自然に会話を始められる、相手の興味や関心に合わせた話題を選べる、異なる意見や価値観を持つ人とも建設的な対話ができるなどの行動が、対人関係における手腕の表れです。また、適切なタイミングでユーモアを交えたり、相手の立場や感情に配慮したりすることも重要です。

ただし、このコンピテンシーが「強調されすぎ」ると、「人当たりの良さで問題をうやむやに済ませてしまうことがある」「人脈を築き親交を結ぶために、あまりに時間を使いすぎる」「現実的だと見なされないことがある」といったリスクがあります。対人関係に力を入れるあまり、本来の業務や目標がおろそかになることもあるのです。

対人関係における手腕を高めるためには、まず自分自身の対人スタイルを理解することが大切です。自分がどのようなコミュニケーションを好み、どのような場面で苦手意識を持つかを把握しましょう。また、相手のコミュニケーションスタイルに合わせる柔軟性や、異なる価値観や背景を持つ人への理解と尊重も重要です。さらに、小さな約束を守る、感謝の気持ちを表すなど、信頼関係を築くための日常的な行動を意識することも効果的です。

上司との関係構築

「上司との関係構築」というコンピテンシーは、上司によく対応し、良好な関係を築く能力を指します。単に言われたことをこなすだけでなく、上司との信頼関係を構築し、互いに成長できる関係を作ることが求められます。

このコンピテンシーが高い人は、「上司によく対応し、関係が良好である」「良い上司のために勤勉に働く」「良きコーチであり、裁量権を与えてくれる上司から積極的に学ぶ」といった特徴があります。つまり、上司との関係を単なる指示・命令の関係ではなく、互いに学び合い、成長するための関係として捉えているのです。

例えば、上司の期待を理解し、それに応える努力をする、上司のフィードバックを素直に受け止め、改善に活かす、上司の仕事の負担を軽減するために自発的にサポートするなどの行動が、上司との関係構築の表れです。また、適切なタイミングで自分の意見や提案を伝えることも重要です。

ただし、このコンピテンシーが「強調されすぎ」ると、「上司にべったりであり、助言や忠告を偉そうに行う」「フィードバックや学習の他の手段を締め出す」「ふさわしくない上司をモデルケースとして選ぶ」といったリスクがあります。上司との関係に固執するあまり、客観性や独自性を失うこともあるのです。

上司との関係構築を高めるためには、まず上司の期待や優先事項を理解することが大切です。定期的なコミュニケーションを通じて、上司が何を重視しているかを把握しましょう。また、約束したことは必ず守る、報告・連絡・相談を欠かさないなど、信頼を築くための基本的な行動を徹底することも重要です。さらに、上司のフィードバックを積極的に求め、それを自己成長に活かす姿勢も効果的です。

同僚との関係構築

「同僚との関係構築」というコンピテンシーは、意見の共通点を素早く見抜き、全員にとって好ましい問題の解決を図る能力を指します。チームの一員として協力し合い、互いに支え合う関係を構築することが求められます。

このコンピテンシーが高い人は、「意見の共通点を素早く見抜き、全員にとって好ましい問題の解決を図る」「自分の自信の利害を表明し、さらに他のグループにも公正な態度をとる」「同輩と共に、最大限スムーズに問題を解決する」といった特徴があります。つまり、自分の利益だけでなく、チーム全体の利益を考えて行動できるのです。

例えば、プロジェクトで意見が対立したとき、双方の主張の共通点を見つけて折衷案を提案する、自分の担当外の仕事でも同僚が困っていれば手助けする、同僚の成功を素直に喜び、称えるなどの行動が、同僚との関係構築の表れです。また、オープンなコミュニケーションを心がけ、必要な情報を共有することも重要です。

ただし、このコンピテンシーが「強調されすぎ」ると、「あまりに多くの同輩と意見を交換し、全員を満足させることにあまりに多く気を取られる」「相手に対して融通を利かせすぎる」「他人の犠牲の上に同輩との対人関係に多くを費やす」といったリスクがあります。関係構築に力を入れるあまり、本来の業務や自分の立場を見失うこともあるのです。

同僚との関係構築を高めるためには、まず相手の立場や状況を理解する共感力が大切です。また、自分の考えや感情を適切に表現するコミュニケーション力も重要です。さらに、信頼関係を築くために、約束を守る、誠実に対応する、感謝の気持ちを伝えるなどの基本的な行動を心がけましょう。そして、時には自分の意見をしっかり主張しつつも、相手の意見も尊重する柔軟性も大切です。

直属の部下に対する配慮

「直属の部下に対する配慮」というコンピテンシーは、部下の仕事や仕事以外の生きがいに関心を持ち、適切にサポートする能力を指します。単に業務上の指示を出すだけでなく、部下の成長や満足度にも気を配ることが求められます。

このコンピテンシーが高い人は、「部下の仕事や仕事以外の生きがいに関心を持っている」「部下の計画、問題、要望について尋ねる」「部下の懸念や疑問について知る」といった特徴があります。つまり、部下を一人の人間として尊重し、その成長を支援する姿勢を持っているのです。

例えば、定期的に一対一のミーティングを設け、部下の状況や課題を把握する、部下の強みを活かせる仕事を任せる、部下の成長につながるフィードバックを提供する、プライベートな事情にも配慮するなどの行動が、部下に対する配慮の表れです。また、部下の成果を適切に評価し、認めることも重要です。

ただし、このコンピテンシーが「強調されすぎ」ると、「部下に断固たる態度を取るのに苦労する」「部下を大目に見すぎる」「部下に対して、彼らが慣れている領域を打破し、課題に挑むよう鼓舞しない」といったリスクがあります。配慮が過ぎると、部下の成長を妨げることもあるのです。

部下に対する配慮を高めるためには、まず部下一人ひとりの特性や状況を理解することが大切です。また、適切な距離感を保ちながらも、必要なサポートを提供できる柔軟性も重要です。さらに、部下が自律的に成長できるよう、適切な権限委譲やチャレンジングな課題の提供も心がけましょう。そして、部下の成果や努力を適切に評価し、フィードバックする習慣も効果的です。

部下への対峙

「部下への対峙」というコンピテンシーは、問題のある部下に厳しく、タイムリーな手法で取り組む能力を指します。問題を放置せず、適切に対処することで、チーム全体のパフォーマンスを維持することが求められます。

このコンピテンシーが高い人は、「問題の部下に厳しく、タイムリーな手法で取り組む」「問題を深刻化させない」「定期的に実績を見直し、タイムリーな話し合いを持つ」といった特徴があります。つまり、問題が大きくなる前に適切に対処し、部下の成長を促すことができるのです。

例えば、パフォーマンスの低下や問題行動が見られたら、すぐに個別面談を設定して原因を探る、具体的な改善点を明確に伝える、改善のための支援を提供するなどの行動が、部下への対峙の表れです。また、必要に応じて厳しいフィードバックを与えることも重要です。

ただし、このコンピテンシーが「強調されすぎ」ると、「問題の部下への対処があまりに早すぎる」「問題解決への努力が足りない」「短時間で成果が出るのものと期待しすぎる」といったリスクがあります。厳しさが過ぎると、部下のモチベーションを低下させることもあるのです。

部下への対峙のスキルを高めるためには、まず問題の本質を正確に把握することが大切です。表面的な症状だけでなく、根本的な原因を探ることで、効果的な対処が可能になります。また、感情的にならず、事実に基づいた冷静な対応を心がけることも重要です。さらに、批判だけでなく、改善のための具体的な提案や支援を提供することで、建設的な対話が生まれます。そして、フォローアップを欠かさず、改善の進捗を確認する習慣も効果的です。

直属の部下に対する公正さ

「直属の部下に対する公正さ」というコンピテンシーは、部下を公平に扱い、正々堂々と行動する能力を指します。えこひいきせず、透明性のある対応をすることで、部下からの信頼を得ることが求められます。

このコンピテンシーが高い人は、「部下を公平に扱う」「正々堂々と行動する」「率直な議論をする」「秘密の計画を持たない」といった特徴があります。つまり、オープンで公正なコミュニケーションを通じて、部下との信頼関係を築くことができるのです。

例えば、評価基準を明確にし、それに基づいた公平な評価を行う、全ての部下に同じ情報を提供する、特定の部下だけを優遇しない、意思決定の理由を説明するなどの行動が、部下に対する公正さの表れです。また、ミスや失敗に対しても、一貫した対応をすることも重要です。

ただし、このコンピテンシーが「強調されすぎ」ると、「全員を満足させようとして多くの時間を使う」「公平に仕事を分配することに悩み、最も必要とすることを利用すること、最高の課題に挑むこと、または最も必要なことを改革することをしない」といったリスクがあります。公平さにこだわるあまり、効率性や効果性が損なわれることもあるのです。

部下に対する公正さを高めるためには、まず自分の無意識のバイアスに気づくことが大切です。誰もが持っている先入観や偏見を認識し、それに左右されないよう意識的に行動しましょう。また、明確な基準や期待値を設定し、それに基づいた評価を行うことも重要です。さらに、決定の理由を透明に説明し、部下からの質問や懸念に誠実に対応する姿勢も効果的です。そして、全ての部下に成長の機会を平等に提供することで、公正な環境を作ることができます。

人を理解する

「人を理解する」というコンピテンシーは、グループの行動の対象と動機を理解する能力を指します。相手の立場や感情、ニーズを把握し、それに基づいた対応をすることが求められます。

このコンピテンシーが高い人は、「グループの行動の対象と動機を理解する」「立場、意思、必要性に関するグループの意向を汲み取る」「彼らが何に重点を置くこと、および彼らのやる気を引出す方法を読み取る」といった特徴があります。つまり、表面的な言動だけでなく、その背景にある感情や動機を理解できるのです。

例えば、会議で沈黙している人の表情や態度から不満や懸念を読み取る、相手の言葉の裏にある本当の意図を理解する、異なる価値観や背景を持つ人の視点を尊重するなどの行動が、人を理解するコンピテンシーの表れです。また、相手の反応を見ながら、自分のコミュニケーション方法を調整することも重要です。

ただし、このコンピテンシーが「強調されすぎ」ると、「グループが何を行うか、行わないかの行動予測の分析に時間を使いすぎる」「各人に対するグループの評価から一般論を言う」「グループの個人的な印象をもって個々のメンバーを同様に見なす」といったリスクがあります。分析に時間をかけすぎて、行動が遅れることもあるのです。

人を理解するスキルを高めるためには、まず積極的に傾聴することが大切です。相手の言葉だけでなく、表情や声のトーン、身振り手振りなどの非言語コミュニケーションにも注意を払いましょう。また、異なる価値観や文化的背景への理解を深めることも重要です。さらに、自分の先入観や偏見に気づき、それに左右されないよう意識的に行動することも効果的です。そして、相手の立場に立って考える共感力を養うことで、より深い理解が可能になります。

人の適切な評価

「人の適切な評価」というコンピテンシーは、才能をうまく見出し、組織の内外の人の長所と限界をはっきり示す能力を指します。相手の潜在能力や適性を見極め、適切な役割や成長機会を提供することが求められます。

このコンピテンシーが高い人は、「才能をうまく見出せる」「適切な自己開示の後、組織の内外の人の長所と限界をはっきり示す」「さまざまな状況全般において、人がしたいことを正確に推定できる」といった特徴があります。つまり、人の表面的な印象だけでなく、その人の本質や可能性を見抜くことができるのです。

例えば、面接や日常の観察を通じて相手の強みや弱みを正確に把握する、人の潜在能力を見抜き、それを引き出す機会を提供する、相手の適性に合った役割や仕事を任せるなどの行動が、人の適切な評価の表れです。また、相手の成長可能性を信じ、それを支援する姿勢も重要です。

ただし、このコンピテンシーが「強調されすぎ」ると、「他人の粗探しをする」「相手について最初に下した判断を変えようとしない」「さらなる証拠を探さない、または受け入れない」といったリスクがあります。先入観に基づいた評価が固定化し、相手の成長や変化を見逃すこともあるのです。

人の適切な評価のスキルを高めるためには、まず多様な視点から人を見る習慣をつけることが大切です。一つの側面や短期間の観察だけで判断せず、様々な状況での行動や長期的な成長過程を見ましょう。また、自分のバイアスや先入観に気づき、それに左右されないよう意識的に行動することも重要です。さらに、定期的にフィードバックを求め、自分の評価の正確さを検証する習慣も効果的です。そして、人は変化し成長するという前提に立ち、評価を柔軟に更新する姿勢も大切です。

この章の人間関係の要点

人間関係を築くコンピテンシーは、ビジネスの成功において非常に重要な役割を果たします。どんなに優れた専門知識や技術を持っていても、良好な人間関係がなければ、その能力を十分に発揮することはできません。

まず、親しみやすさや思いやりといった基本的な対人スキルが、信頼関係の土台となります。相手に心を開いてもらうためには、自分自身がオープンで温かい態度を示すことが大切です。

次に、傾聴力や対人関係における手腕といったコミュニケーションスキルが、関係を深め、維持するために重要です。相手の話をしっかり聞き、適切に反応することで、相互理解が深まります。

また、上司、同僚、部下といった異なる立場の人との関係構築には、それぞれ異なるアプローチが必要です。上司との関係では信頼を得ることが、同僚との関係では協力し合うことが、部下

第4章:チームで成果を出す コンピテンシー

効果的なチーム作りの基本

「効果的なチーム作り」というコンピテンシーは、必要に応じて人をチームに編成し、強固なモラルと精神を育てる能力を指します。単に人を集めるだけでなく、一体感のある高パフォーマンスチームを構築することが求められます。

このコンピテンシーが高い人は、「チーム内に強固なモラルと精神を育てる」「勝利と成功を分かち合う」「オープンな対話を促進する」「各自の仕事を責任を持って各自に仕上げさせる」「チーム全体としての成功を規定する」「チーム内に帰属意識を育てる」といった特徴があります。つまり、メンバー一人ひとりの強みを活かしながら、チーム全体の力を最大化できるのです。

例えば、メンバーの特性や強みを理解し、適材適所の役割分担をする、共通の目標や価値観を明確にして共有する、メンバー間のオープンなコミュニケーションを促進する、チームの成功を祝い、功績を公平に認めるなどの行動が、効果的なチーム作りの表れです。また、メンバー同士の信頼関係を構築するための場や機会を意識的に作ることも重要です。

ただし、このコンピテンシーが「強調されすぎ」ると、「他者をユニークな個人として扱わない」「ディベートのためにすべてをオープンにし、しかるべきプロセスの進行を遅らせる」「人の感情を害さないことや厳しい決断をしないことに囚われすぎる」「他から独立しているリーダーを養成しない」といったリスクがあります。チームワークを重視するあまり、個人の成長や迅速な意思決定が阻害されることもあるのです。

効果的なチーム作りのスキルを高めるためには、まずチームの目的や目標を明確にすることが大切です。何のためのチームなのか、何を達成したいのかを全員が理解していることが重要です。また、メンバー一人ひとりの強みや特性を把握し、それを活かせる役割を与えることも効果的です。さらに、定期的なフィードバックやコミュニケーションの場を設け、問題や課題を早期に発見し、解決する仕組みを作ることも大切です。そして、チームの成果を評価し、成功を祝う文化を作ることで、モチベーションの維持・向上につながります。

人への指示

「人への指示」というコンピテンシーは、明確な指示を出し、適切に仕事を配分する能力を指します。単に命令するだけでなく、相手が理解し、行動できるような指示を出すことが求められます。

このコンピテンシーが高い人は、「明確な指示を出すことに優れている」「広がりのある目的を設定する」「仕事の負荷を適切に分配する」「よく練られた計画に系統だったやり方で仕事を配置する」「仕事や成果について、人との双方向の対話を維持する」「人それぞれの最良の部分を引出す」「明確に意思を伝える」といった特徴があります。つまり、相手が何をすべきかを明確に理解できるような指示を出し、その実行をサポートできるのです。

例えば、指示を出す前に全体像や目的を説明する、具体的で明確な言葉で指示を出す、相手の理解度を確認する質問をする、期待する成果や期限を明確にする、必要なリソースや支援を提供するなどの行動が、人への指示のコンピテンシーの表れです。また、指示を出した後もフォローアップし、進捗を確認することも重要です。

ただし、このコンピテンシーが「強調されすぎ」ると、「管理しすぎる」「意見やアイディアを妨害し、意見の相違を受け入れず、他の人に水をさす」「断片的な仕事だけを委任し、全体像を共有しない」「ひどく命令的で、創造性や、やる気を押しつぶす」といったリスクがあります。指示が細かすぎると、相手の自主性や創造性が損なわれることもあるのです。

人への指示のスキルを高めるためには、まず自分の考えや期待を整理することが大切です。何を達成したいのか、どのような方法で行うべきかを明確にしましょう。また、相手の理解度や能力に合わせた指示の出し方を工夫することも重要です。さらに、一方的に指示するのではなく、相手の意見や質問を受け入れる姿勢も大切です。そして、指示を出した後のフォローアップを忘れず、必要に応じてサポートや修正を行うことも効果的です。

部下の育成

「部下の育成」というコンピテンシーは、部下に成長の機会を与え、その能力を最大限に引き出す能力を指します。単に現在の業務をこなすだけでなく、将来を見据えた育成が求められます。

このコンピテンシーが高い人は、「やりがいがあり、領域を広げる可能性のある仕事を与え、担当させる」「頻繁に自己啓発の討論会を開催する」「各部下のキャリアの最終目標を把握している」「説得力のある自己啓発計画を作成し、それを実行する」「自己啓発の運動を受け入れるよう部下を後押しする」「仕事が必要な部下を受け入れる」「人を育成する」といった特徴があります。つまり、部下の成長を長期的な視点で考え、それをサポートできるのです。

例えば、部下の強みや弱み、キャリア志向を把握する、成長につながるチャレンジングな仕事を任せる、定期的にフィードバックを提供する、メンタリングやコーチングを行う、研修や学習の機会を提供するなどの行動が、部下の育成の表れです。また、失敗を学びの機会と捉え、それを糧に成長できる環境を作ることも重要です。

ただし、このコンピテンシーが「強調されすぎ」ると、「チームを犠牲にして、数人の部下の改革に集中してしまう」「課題の割当てを分配する際に、作業上の不公平さを作る」「部下がどれくらい成長できるかという点を、気楽に考えすぎる」といったリスクがあります。育成に力を入れるあまり、現在の業務やチーム全体のバランスが損なわれることもあるのです。

部下の育成のスキルを高めるためには、まず部下一人ひとりの特性や志向を理解することが大切です。面談や日常の観察を通じて、強み、弱み、興味、キャリア志向などを把握しましょう。また、適切な難易度の仕事を任せ、成功体験を積ませることも効果的です。さらに、定期的なフィードバックを通じて、成長の方向性を示すことも重要です。そして、自ら学ぶ姿勢を示し、学習する組織文化を作ることで、部下の自発的な成長を促すことができます。

権限委譲

「権限委譲」というコンピテンシーは、日常的で重要な仕事や決断を明確に気持ちよく委任する能力を指します。単に仕事を振るだけでなく、責任と権限を適切に委譲することが求められます。

このコンピテンシーが高い人は、「日常的で重要な仕事や決断の両方を明確に気持ちよく委任する」「行動責任と結果責任の両方を広く共有する」「人を信頼して仕事させることが多い」「部下に自分たちの仕事を最後までやらせる」といった特徴があります。つまり、部下に適切な裁量権を与え、その成長と自律性を促進できるのです。

例えば、仕事の目的や期待する成果を明確に伝える、必要な権限と責任を同時に与える、適切なサポートを提供しつつも過度に介入しない、結果だけでなくプロセスも評価する、成功も失敗も共有し学びに変えるなどの行動が、権限委譲の表れです。また、部下の能力や経験に応じて、徐々に難易度の高い仕事を任せていくことも重要です。

ただし、このコンピテンシーが「強調されすぎ」ると、「十分な方向性や援助を与えずに、過剰に委任する」「部下に非現実的な期待をする、または個人のやる気を上回る仕事や決断を委任する前に、その枠組みを作り上げてしまう」「自分の仕事に熱心でない」といったリスクがあります。委任が適切でないと、部下に過度な負担がかかったり、逆に成長の機会を逃したりすることもあるのです。

権限委譲のスキルを高めるためには、まず部下の能力や経験を正確に把握することが大切です。そして、その能力に合った仕事と権限を与えましょう。また、委任する際には、目的や期待する成果、期限などを明確に伝えることが重要です。さらに、適切なフォローアップを行い、必要に応じてサポートを提供することも大切です。そして、成功した場合は称賛し、失敗した場合は一緒に原因を分析し、学びに変える姿勢も効果的です。

人への喚起

「人への喚起」というコンピテンシーは、各自が最善を尽くしたいという雰囲気を作り、モチベーションを高める能力を指します。単に指示するだけでなく、相手の内発的な動機を引き出すことが求められます。

このコンピテンシーが高い人は、「各自の最善を尽くしたいという雰囲気を作る」「多種多様な部下、チーム、プロジェクトのメンバーにやる気を起こさせることができる」「各人のやる気を刺激するボタンを押し、最大限のやる気を引出すことができる」「仕事や決断を後押しする」「他者に権力を与える」「それぞれの人から意見を聞き、仕事意識の共有とその情報や経緯を共有する」「各自の仕事が重要であることを、各自に感じさせる」「一緒に仕事に取り組みたい相手だと人に思われる」といった特徴があります。つまり、相手の価値観や動機を理解し、それに合わせた働きかけができるのです。

例えば、相手の価値観や興味を理解し、それに合った仕事や役割を与える、仕事の意義や全体における位置づけを伝える、適切な目標設定と達成感を味わえる機会を提供する、成果を認め、適切に評価するなどの行動が、人への喚起の表れです。また、自らが情熱を持って仕事に取り組む姿を見せることも重要です。

ただし、このコンピテンシーが「強調されすぎ」ると、「個人に重点を置きすぎて、チーム精神の育成をうまくできない」「各人を個別に扱うために、えこひいきをしているように見える」「必要な場面で厳しい立場を取らない」「意見を取り入れるまで時間がかかりすぎる」「厳しい期限付きの仕事を割当てたがらない」といったリスクがあります。個人のモチベーションに注力するあまり、チーム全体のパフォーマンスや厳しい現実への対応が疎かになることもあるのです。

人への喚起のスキルを高めるためには、まず相手の価値観や動機を理解することが大切です。何に喜びを感じ、何にやりがいを見出すのかを把握しましょう。また、仕事の意義や目的を明確に伝え、共感を得ることも重要です。さらに、適切な目標設定と達成感を味わえる機会を提供することも効果的です。そして、成果を認め、適切に評価・フィードバックすることで、継続的なモチベーション維持につながります。

コンフリクト・マネジメント

「コンフリクト・マネジメント」というコンピテンシーは、争いになった場合、それを好機と捉え、効果的に解決する能力を指します。対立を避けるのではなく、建設的に対処し、より良い結果につなげることが求められます。

このコンピテンシーが高い人は、「争いになった場合、それを好機と捉える」「状況を素早く読み取る」「十分な傾聴力がある」「難しい問題を徹底的に検討し、争いを公平に解決する」「共通の立場を見出し、最大限スムーズに協力を得る」といった特徴があります。つまり、対立を恐れず、むしろそこから新たな価値や解決策を生み出せるのです。

例えば、対立が生じたときに冷静に状況を分析する、双方の主張をしっかり聞く、感情ではなく事実に基づいて議論する、共通の利益や目標を見出す、win-winの解決策を模索するなどの行動が、コンフリクト・マネジメントの表れです。また、対立を予防するための環境づくりや、早期発見・早期対応の姿勢も重要です。

ただし、このコンピテンシーが「強調されすぎ」ると、「非常に攻撃的で独断的である」「他人の問題に割り込む」「他がまだ準備ができていないうちに、解決しようとする」「自由討論に水をさす」「頑迷な人間や解決できない問題に、無駄な時間を割く」といったリスクがあります。対立解決に積極的になりすぎると、かえって状況を悪化させることもあるのです。

コンフリクト・マネジメントのスキルを高めるためには、まず自分自身の対立への反応パターンを理解することが大切です。対立を避ける傾向があるのか、逆に攻撃的になりがちなのかを把握し、バランスの取れた対応を心がけましょう。また、相手の立場や感情を理解する共感力も重要です。さらに、問題解決のための様々なアプローチや技法を学び、状況に応じて使い分けることも効果的です。そして、対立を通じて学んだことを次に活かす振り返りの習慣も大切です。

仕事の管理・測定

「仕事の管理・測定」というコンピテンシーは、仕事や決定に対する責任を明確に割当て、進捗を監視する能力を指します。計画だけでなく、実行と評価のプロセスまでを効果的に管理することが求められます。

このコンピテンシーが高い人は、「仕事や決定に対する責任を明確に割当てる」「明確な目的や目安を設定する」「過程、進捗、結果を監視する」「フィードバックの回路を仕事に組み込む」といった特徴があります。つまり、何をすべきか、誰が担当するか、どのように進捗を確認するかを明確にし、効率的に目標達成へと導くことができるのです。

例えば、プロジェクトの開始時に明確な目標と役割分担を設定する、進捗を定期的に確認するための仕組みを作る、問題が発生した際に早期に対応する、成果を測定するための指標を設定する、結果をフィードバックし次の改善につなげるなどの行動が、仕事の管理・測定の表れです。また、メンバーが自律的に動けるよう、適切な情報共有と権限委譲を行うことも重要です。

ただし、このコンピテンシーが「強調されすぎ」ると、「管理をしすぎる」「人の肩越しに見て監視する」「指示があまりにも多く、人に権力を与えない」といったリスクがあります。管理が過剰になると、メンバーの自主性や創造性が損なわれ、かえって効率が低下することもあるのです。

仕事の管理・測定のスキルを高めるためには、まず目標と期待値を明確にすることが大切です。何を達成すべきか、どのような成果を期待しているかを具体的に伝えましょう。また、進捗を確認するための適切な指標とタイミングを設定することも重要です。さらに、問題が発生した際に早期に対応できる仕組みを作ることも効果的です。そして、結果だけでなくプロセスも評価し、次の改善につなげる習慣をつけることで、継続的な成長が可能になります。

採用と配置

「採用と配置」というコンピテンシーは、才能を見抜く力があり、内外から有能な人を雇用する能力を指します。単に空いたポジションを埋めるだけでなく、組織の成長に貢献できる人材を見極め、適材適所に配置することが求められます。

このコンピテンシーが高い人は、「才能を見抜く力がある」「内外から有能な人を雇用する」「優秀な人を選ぶことをためらわない」「優秀なスタッフを集める」といった特徴があります。つまり、人の潜在能力や適性を見抜き、組織に最適な人材を獲得・配置できるのです。

例えば、採用面接で表面的なスキルだけでなく、価値観や成長可能性も評価する、多様な視点から候補者を評価するために複数の面接官を設ける、組織の文化や将来のニーズを考慮した採用基準を設定する、採用後も適切なフォローアップを行うなどの行動が、採用と配置のコンピテンシーの表れです。また、社内の人材の強みや弱みを把握し、適材適所に配置することも重要です。

ただし、このコンピテンシーが「強調されすぎ」ると、「取りかかりの遅い人を大目に見る」「表面的な特徴を見て選ぶ」「良いチームプレイヤーとは言えない個人成績の優秀者でチームを組む」「現在優秀ではあるがこれ以上成長があまり見込めない人を好む」「一緒に組んで仕事をするのではなく、すぐに配置換えをする」といったリスクがあります。採用や配置の判断が偏ると、チームの調和やパフォーマンスが損なわれることもあるのです。

採用と配置のスキルを高めるためには、まず組織の現在と将来のニーズを明確にすることが大切です。どのようなスキルや特性を持った人材が必要かを把握しましょう。また、多様な視点から候補者を評価するための構造化された面接プロセスを設計することも重要です。さらに、自分のバイアスや先入観に気づき、それに左右されない客観的な評価を心がけることも効果的です。そして、採用後のオンボーディングやフォローアップを充実させることで、新しい人材の早期戦力化と定着率の向上につながります。

ダイバーシティ・マネジメント

「ダイバーシティ・マネジメント」というコンピテンシーは、すべてのタイプやクラスの人を公平に管理する能力を指します。多様な背景や特性を持つ人々の違いを尊重し、その強みを活かしながら、公平な環境を作ることが求められます。

このコンピテンシーが高い人は、「すべてのタイプやクラスの人を公平に管理する」「すべての人種、国籍、文化、障害、年齢、性別にかかわらずに適切に対処する」「クラスに無関係に変化や多様性を取り入れる」「すべての人を常に公平かつ公正に扱う」といった特徴があります。つまり、多様性を単なる課題ではなく、組織の強みとして活かすことができるのです。

例えば、採用や評価のプロセスで無意識のバイアスを排除する仕組みを作る、多様なバックグラウンドを持つメンバーの意見を積極的に取り入れる、異なる文化や価値観への理解を深める機会を設ける、誰もが発言しやすい環境を整えるなどの行動が、ダイバーシティ・マネジメントの表れです。また、多様性を尊重する組織文化を醸成するためのリーダーシップを発揮することも重要です。

ただし、このコンピテンシーが「強調されすぎ」ると、「特定のクラスのメンバーを容認しすぎる」「平等な基準や判定基準をすべてのクラスに適用するわけではない」「一つのクラスの人たちをえこひいきする」「多様性を確保するために基準を甘くする」といったリスクがあります。多様性を重視するあまり、公平性や能力主義が損なわれることもあるのです。

ダイバーシティ・マネジメントのスキルを高めるためには、まず自分自身の無意識のバイアスに気づくことが大切です。誰もが持っている先入観や偏見を認識し、それに左右されないよう意識的に行動しましょう。また、多様な背景や特性を持つ人々の視点や経験から学ぶ姿勢も重要です。さらに、組織の方針やプロセスを見直し、多様性を阻む障壁を取り除くことも効果的です。そして、多様性を単なる数値目標ではなく、組織の創造性や問題解決力を高めるための資産として捉える視点も大切です。

この章の実践ポイント

チームで成果を出すコンピテンシーは、個人の能力だけでなく、チーム全体の力を最大化するために不可欠なものです。これらのコンピテンシーを高めることで、メンバー一人ひとりの強みを活かしながら、共通の目標に向かって効果的に協働することができます。

まず、効果的なチーム作りのためには、共通の目標や価値観を明確にし、それをメンバー全員と共有することが大切です。また、メンバーの強みや特性を理解し、適材適所の役割分担を行うことも重要です。さらに、オープンなコミュニケーションを促進し、信頼関係を構築するための場や機会を意識的に作りましょう。

次に、人への指示や部下の育成においては、明確で具体的な指示を出すことと、成長につながるフィードバックを提供することが重要です。また、適切な権限委譲を行い、メンバーの自律性と責任感を育むことも効果的です。

また、コンフリクト・マネジメントや仕事の管理・測定においては、問題や対立を早期に発見し、建設的に対処する姿勢が求められます。また、明確な目標と指標を設定し、進捗を定期的に確認することで、チーム全体のパフォーマンスを高めることができます。

さらに、採用と配置やダイバーシティ・マネジメントにおいては、多様な視点から人材を評価し、組織の成長に貢献できる人材を見極めることが大切です。また、多様性を尊重し、その強みを活かす環境を作ることも重要です。

チームで成果を出すためには、これらのコンピテンシーをバランスよく高めていくことが必要です。一つひとつの行動や判断が、チーム全体の雰囲気やパフォーマンスに影響を与えることを意識し、日々の実践を通じてスキルを磨いていきましょう。

第5章:問題解決と意思決定の コンピテンシー

行動指向の重要性

「行動指向」というコンピテンシーは、勤勉に働くことに喜びを感じ、行動することを第一とする能力を指します。単に考えるだけでなく、実際に行動に移すことで成果を生み出すことが求められます。

このコンピテンシーが高い人は、「勤勉に働くことに喜びを感じている」「行動することを第一とし、自分で定めた課題に向けて最大限の努力を傾ける」「不十分な計画で行動するのをいとわない」「他の人より好機を捕らえるのがうまい」といった特徴があります。つまり、チャンスを見つけたら迅速に行動し、結果を出すことができるのです。

例えば、新しいアイデアが浮かんだらすぐに試してみる、問題が発生したら迅速に対応策を講じる、機会を見つけたら躊躇せずに行動する、失敗を恐れずにチャレンジするなどの行動が、行動指向の表れです。また、計画段階で完璧を求めるのではなく、まず行動し、フィードバックを得ながら改善していく姿勢も重要です。

ただし、このコンピテンシーが「強調されすぎ」ると、「ワーカホリックである」「十分な分析をせずに解決策を推し進める」「戦略的な思考がない」「ひどく急がせようとして、ガミガミうるさく言いたてる」「無関心やおざなりな態度のせいで、個人的な問題や家庭生活の問題を抱えている」「重要な任務や仕事には加わらず、どうでもよいものには加わる」「個人生活を無視して、燃え尽きる」といったリスクがあります。行動が早すぎると、十分な検討がなされず、かえって問題を引き起こすこともあるのです。

行動指向のスキルを高めるためには、まず自分の行動パターンを理解することが大切です。考えすぎて行動できない傾向があるのか、逆に考えずに行動しすぎる傾向があるのかを把握しましょう。また、小さな成功体験を積み重ねることで、行動する自信をつけることも効果的です。さらに、行動の優先順位をつけ、重要なことから取り組む習慣をつけることも重要です。そして、行動した結果を振り返り、次に活かす習慣も大切です。

不確実な事態への対応力

「不確実な事態への対応力」というコンピテンシーは、変化に有効にうまく対応できる能力を指します。明確な答えがない状況でも、冷静に判断し、適切に行動することが求められます。

このコンピテンシーが高い人は、「変化に有効にうまく対応できる」「話や態度を楽々と切り替えられる」「全体像が得られてなくても決断し行動する」「事態がはっきり定まらなくてもイライラしない」「取りかかる前に準備をすべて完了すべし、と考えない」「リスクや不確定要素を楽々と処理する」といった特徴があります。つまり、不確実性を恐れず、むしろそれを機会として捉えることができるのです。

例えば、突然の方針変更があっても柔軟に対応する、完全な情報がなくても適切な判断を下す、予期せぬ問題が発生しても冷静に対処する、変化を前向きに受け止めるなどの行動が、不確実な事態への対応力の表れです。また、常に複数の選択肢や代替案を考えておくことも重要です。

ただし、このコンピテンシーが「強調されすぎ」ると、「十分なデータがないままに結論を出す」「関係のないことをやってギャップを埋める」「物事の核心に触れないので、周囲の人々を欲求不満にさせる」「順序立った問題解決法を過小評価する」「前例や過去のいきさつを認めない」「実績のある解決策を顧みず、初めて試すリスクの多い方法に目を向けるという間違いを犯す」「物事を不必要に複雑にする」といったリスクがあります。不確実性を受け入れるあまり、必要な分析や検討を怠ることもあるのです。

不確実な事態への対応力を高めるためには、まず自分の不確実性に対する許容度を理解することが大切です。不確実な状況に対して過度に不安を感じるのか、逆に軽視しすぎる傾向があるのかを把握しましょう。また、変化を恐れず、むしろ学びの機会と捉える姿勢も重要です。さらに、複数のシナリオを想定し、それぞれに対する対応策を考えておくことも効果的です。そして、失敗を恐れず、試行錯誤を通じて学ぶ習慣も大切です。

問題解決能力の磨き方

「問題解決能力」というコンピテンシーは、困難な問題を効果的な解決策で解決するために、厳密な論理と方法を用いる能力を指します。単に表面的な解決策を提示するのではなく、根本的な原因を特定し、効果的な対策を講じることが求められます。

このコンピテンシーが高い人は、「困難な問題を効果的な解決策で解決するために、厳密な論理と方法を用いる」「答えを得られそうな情報源をすべて調べる」「隠れた問題を読み取ることができる」「正直な分析にすぐれている」「表面的なことを見透かし、最初に得られた答えに踏みとどまらず、さらに調査を続ける」といった特徴があります。つまり、問題の本質を見抜き、効果的な解決策を導き出すことができるのです。

例えば、問題が発生したときに表面的な症状だけでなく根本原因を探る、複数の視点から問題を分析する、データや事実に基づいて判断する、創造的な解決策を考案する、解決策の実行可能性や効果を評価するなどの行動が、問題解決能力の表れです。また、過去の経験や知識を活用しつつも、新しいアプローチを試みる柔軟性も重要です。

ただし、このコンピテンシーが「強調されすぎ」ると、「分析麻痺に陥りやすい」「結論を得るまで時間がかかりすぎる」「分析の優先順位を設定しない」「物事を進める手順に時間がかかり、全体像を見逃す」「物事を必要以上に複雑に捉える」「個人的に分析をしすぎる」といったリスクがあります。分析に時間をかけすぎて、行動が遅れることもあるのです。

問題解決能力を高めるためには、まず問題を明確に定義する習慣をつけることが大切です。何が問題なのか、どのような影響があるのかを具体的に把握しましょう。また、データや事実に基づいて判断する客観性も重要です。さらに、創造的な解決策を生み出すためのブレインストーミングや発想法を学ぶことも効果的です。そして、解決策を実行し、その効果を評価するPDCAサイクルを回す習慣も大切です。

決断の質を高める

「決断の質」というコンピテンシーは、分析結果、良識、経験、判断を総合的に考えてよい決断をする能力を指します。単に決断するだけでなく、長期的に見て正しい決断をすることが求められます。

このコンピテンシーが高い人は、「分析結果、良識、経験、判断を総合的に考えてよい決断をする」「自分の解決策や提案のほとんどが、長期的に判断して正しく、正確であることが判明した」「助言や解決法を人から求められる」といった特徴があります。つまり、様々な要素を考慮した上で、バランスの取れた判断ができるのです。

例えば、決断する前に必要な情報を収集する、複数の選択肢を比較検討する、短期的な利益だけでなく長期的な影響も考慮する、自分の直感や経験だけでなく他者の意見も取り入れる、リスクと機会のバランスを評価するなどの行動が、決断の質の表れです。また、一度決断したら迷わず実行に移し、結果を検証する姿勢も重要です。

ただし、このコンピテンシーが「強調されすぎ」ると、「賢明である、ほぼ完璧である、間違いを犯すことができない、間違いを犯さない人である、などと自分を大げさに評価する」「頑固で、交渉や妥協の余地がないように見える」「助言を拒絶されたときに不機嫌になる」「データを重視しない人とうまく付き合えない」といったリスクがあります。自分の判断に過度に自信を持ちすぎると、柔軟性や学習の機会を失うこともあるのです。

決断の質を高めるためには、まず自分の決断プロセスを理解することが大切です。どのような情報を重視するのか、どのようなバイアスに影響されやすいのかを把握しましょう。また、重要な決断をする前に、複数の視点から検討する習慣をつけることも重要です。さらに、過去の決断とその結果を振り返り、学びを次に活かす姿勢も効果的です。そして、決断に必要な情報と時間のバランスを見極める判断力も大切です。

タイムリーな決断

「タイムリーな決断」というコンピテンシーは、時には不十分な情報に基づき、時間に余裕がなく、プレッシャーのかかる状況の中でタイムリーに決断する能力を指します。単に良い決断をするだけでなく、適切なタイミングで決断することが求められます。

このコンピテンシーが高い人は、「時には、不十分な情報に基づき、時間に余裕がなく、プレッシャーのかかる状況の中でタイムリーに決断する」「迅速な決断を下すことができる」といった特徴があります。つまり、完璧な情報や条件が揃うのを待つのではなく、その時点で最善の判断を下すことができるのです。

例えば、緊急の問題が発生したときに迅速に対応策を決定する、不確実な状況でもリスクを評価した上で前に進む判断をする、決断を先延ばしにせず適切なタイミングで下す、決断した後は迷わず実行に移すなどの行動が、タイムリーな決断の表れです。また、状況の変化に応じて柔軟に方針を修正する姿勢も重要です。

ただし、このコンピテンシーが「強調されすぎ」ると、「情報を合理的に検討せずに、結論に飛びついて行動を起こす」「私情を挟んだ決断をしがちである」「決断を下す前の全員から徴収した意見をほとんど無視する」「衝動的でせっかちに見られる」「お気に入りの人とばかり連絡をとるという問題を抱えており、それの問題を固定化してしまった」「討論や個人的な居心地の悪さを嫌って、性急に決断を下す」といったリスクがあります。決断が早すぎると、十分な検討がなされず、誤った判断につながることもあるのです。

タイムリーな決断のスキルを高めるためには、まず自分の決断スタイルを理解することが大切です。慎重すぎて決断が遅れがちなのか、逆に性急すぎるのかを把握しましょう。また、どのような決断にどの程度の時間をかけるべきかの判断基準を持つことも重要です。さらに、不確実性を受け入れ、限られた情報の中でも決断する勇気を養うことも効果的です。そして、決断後の修正や調整を柔軟に行う姿勢も大切です。

優先順位の設定

「優先順位の設定」というコンピテンシーは、重要な事柄の処理に自分や他の人の時間を使う能力を指します。何が重要で何が緊急か、何を先に行うべきかを適切に判断することが求められます。

このコンピテンシーが高い人は、「重要な事柄の処理に、自分や他の人の時間を使う」「素早く重要な事柄に着手し、些細な事柄をすべて棚上げにする」「目標への達成に役立つこと、または障害となる事を素早くキャッチできる」「障害を除去する」「焦点を作る」といった特徴があります。つまり、限られた時間やリソースを最も効果的に使うことができるのです。

例えば、タスクの重要度と緊急度を評価して優先順位をつける、長期的な目標に沿った活動を優先する、時間やリソースの制約を考慮して現実的な計画を立てる、「やらないこと」を明確にする、チームのリソースを最適に配分するなどの行動が、優先順位の設定の表れです。また、状況の変化に応じて優先順位を柔軟に見直す姿勢も重要です。

ただし、このコンピテンシーが「強調されすぎ」ると、「他者の優先順位を拒否するのが早すぎる」「あらゆることに単純化を要求し、必要な複雑さを削ぐ」「度を超えて単純化したがる」「チームの優先順位に支配力を及ぼしすぎる」といったリスクがあります。自分の優先順位を押し付けすぎると、チームの協力や多様な視点が失われることもあるのです。

優先順位の設定のスキルを高めるためには、まず自分の長期的な目標や価値観を明確にすることが大切です。何を達成したいのか、何を大切にしているのかを把握しましょう。また、「重要×緊急マトリックス」などのツールを活用して、タスクを分類する習慣をつけることも効果的です。さらに、「80:20の法則」(全体の成果の80%は、全体の活動の20%から生まれる)を意識し、最も効果の高い活動に集中することも重要です。そして、「やらないこと」を決める勇気も大切です。

冷静沈着さの保ち方

「冷静沈着」というコンピテンシーは、プレッシャーがかかっても冷静でいる能力を指します。厳しい状況でも感情をコントロールし、適切な判断と行動ができることが求められます。

このコンピテンシーが高い人は、「プレッシャーがかかっても冷静でいる」「厳しい状況でも、防御的にならず、イライラしない」「分別があると見られる」「厳しい状況で、物事をまとめるよう頼られる」「ストレスに対処できる」「予期せぬことが起きても、平静さを崩さない」「抵抗されたり邪魔されても不満げな態度を取らない」「危機的な状況で問題を解決する」といった特徴があります。つまり、感情に左右されず、理性的に対応できるのです。

例えば、締め切りに追われる状況でも冷静に優先順位をつけて対応する、批判を受けても感情的にならず建設的に受け止める、予期せぬトラブルが発生しても慌てずに対処する、チーム内の緊張状態でも中立的な立場を保つなどの行動が、冷静沈着の表れです。また、自分の感情を認識し、適切に管理する能力も重要です。

ただし、このコンピテンシーが「強調されすぎ」ると、「適切な感情を表さない」「冷淡で思いやりがないと見える」「普通は感情が顔に出る場面で、無表情である」「誤解されやすい」「どちらかと言うと論理よりも感覚に基づいて行動や決定をなす人たちとうまく協調できない」といったリスクがあります。感情を抑えすぎると、人間味が失われ、共感や信頼関係の構築が難しくなることもあるのです。

冷静沈着のスキルを高めるためには、まず自分のストレス反応を理解することが大切です。どのような状況でストレスを感じ、どのような反応が出やすいかを把握しましょう。また、ストレス管理の技法(深呼吸、瞑想、運動など)を学び、日常的に実践することも効果的です。さらに、困難な状況を客観的に捉える習慣をつけることも重要です。そして、適切な感情表現とのバランスを意識し、状況に応じた対応ができるよう心がけましょう。

忍耐力の育て方

「忍耐力」というコンピテンシーは、人やプロセスに寛容である能力を指します。性急に結論を出したり行動したりするのではなく、適切なプロセスを尊重し、時間をかけることが必要な場面で忍耐強く対応することが求められます。

このコンピテンシーが高い人は、「人やプロセスに寛容である」「行動する前に、よく話を聞き点検する」「判断を下し行動する前に、人の言うことやデータを理解しようとする」「行動する前に他の人が同じ水準に到達するように待つ」「必要なプロセスと適切なペース配分を大事にする」「確立されたプロセスに従う」といった特徴があります。つまり、短期的な成果よりも、適切なプロセスと長期的な成功を重視できるのです。

例えば、相手の話を最後まで聞く、複雑な問題に対して時間をかけて検討する、チームメンバーの成長や学習のペースに合わせる、成果が出るまで粘り強く取り組む、失敗しても諦めずに継続するなどの行動が、忍耐力の表れです。また、感情的にならず、冷静に状況を見極める姿勢も重要です。

ただし、このコンピテンシーが「強調されすぎ」ると、「行動するまで時間がかかりすぎる」「全員を満足させようとする」「人の立場を受け入れることと、積極的に相手の言うことを聞く態度が他人に区別がつかない」「問題が半々の確率でその先が不透明なときに、時間を無駄にする」「行動を伴わずに物事を急がせる」といったリスクがあります。忍耐が過ぎると、必要な決断や行動が遅れることもあるのです。

忍耐力を高めるためには、まず自分の性急さに気づくことが大切です。焦りを感じたときに一呼吸置く習慣をつけましょう。また、長期的な視点を持ち、プロセスの重要性を理解することも重要です。さらに、自分と他者の違いを受け入れ、多様なペースや方法を尊重する姿勢も効果的です。そして、小さな成功体験を積み重ねることで、忍耐の価値を実感することができます。

矛盾への対応力

「矛盾への対応力」というコンピテンシーは、つじつまが合わないと思われる方法でも行動できる能力を指します。一見相反する要素を両立させたり、状況に応じて柔軟に対応したりすることが求められます。

このコンピテンシーが高い人は、「つじつまが合わないと思われる方法でも行動できる」「厳しい要求に直面したときに、極めて柔軟に融通性のある態度で臨む」「思いやりに裏打ちされた厳しい態度を取る、相手を傷つけずに主張を通す、柔軟ながら確固たる基準を作るなど、一見すると相反する要素を組み合わせることができる」「状況に応じて行動を変えることができる」「要求が対立している状況にあっても、バランスが取れているように見られる」といった特徴があります。つまり、二項対立的な思考ではなく、複雑な状況に柔軟に対応できるのです。

例えば、厳しいフィードバックを温かい態度で伝える、短期的な成果と長期的な成長のバランスを取る、個人の自由と組織の規律を両立させる、変化を推進しながらも安定性を維持するなどの行動が、矛盾への対応力の表れです。また、状況に応じて異なるリーダーシップスタイルを使い分けることも重要です。

ただし、このコンピテンシーが「強調されすぎ」ると、「偽善的で優柔不断と見られる」「一つのスタイルまたはモデルを、あまりに簡単に他のものに変える」「求められている技能を読み違える」「様々な状況で自分を観察する人を混乱させる」「誤解される」といったリスクがあります。柔軟性が過ぎると、一貫性がなく信頼性に欠けると見られることもあるのです。

矛盾への対応力を高めるためには、まず二項対立的な思考から脱却することが大切です。「AかBか」ではなく「AもBも」という発想を持ちましょう。また、状況の複雑性を理解し、多様な視点から物事を見る習慣も重要です。さらに、自分の行動スタイルを意識的に変化させる練習をすることも効果的です。そして、矛盾する要素のバランスを取る際の自分の判断基準を明確にすることで、一貫性と柔軟性を両立させることができます。

この章の実践ポイント

問題解決と意思決定のコンピテンシーは、ビジネスの場で直面する様々な課題に効果的に対処するために不可欠なものです。これらのコンピテンシーを高めることで、複雑な状況でも適切な判断を下し、成果につなげることができます。

まず、行動指向と不確実な事態への対応力を高めるためには、小さな一歩から始めることが大切です。完璧を求めるのではなく、まず行動し、フィードバックを得ながら改善していく姿勢を持ちましょう。また、不確実性を恐れず、むしろ学びの機会と捉える視点も重要です。

次に、問題解決能力と決断の質を高めるためには、問題の本質を見極める分析力と、バランスの取れた判断力が求められます。データや事実に基づいて判断する習慣をつけると同時に、直感や経験も大切にしましょう。また、決断後の検証と学習のサイクルを回すことも効果的です。

また、タイムリーな決断と優先順位の設定においては、何が重要で何が緊急かを見極める判断力が重要です。限られた時間やリソースを最も効果的に使うための基準を持ち、それに基づいて行動しましょう。

さらに、冷静沈着さと忍耐力においては、感情をコントロールし、適切なプロセスを尊重する姿勢が求められます。ストレス管理の技法を学び、日常的に実践することで、厳しい状況でも冷静に対応できるようになります。

最後に、矛盾への対応力においては、二項対立的な思考から脱却し、複雑な状況に柔軟に対応する能力が重要です。一見相反する要素のバランスを取りながら、状況に応じた適切な対応ができるよう心がけましょう。

問題解決と意思決定のコンピテンシーを高めるためには、日々の小さな判断や行動の積み重ねが大切です。自分の思考パターンや行動傾向を意識し、意図的に改善していくことで、より効果的な問題解決者、意思決定者になることができるでしょう。

第6章:ビジネス感覚を磨く コンピテンシー

ビジネスに対する眼識・洞察力

「ビジネスに対する眼識・洞察力」というコンピテンシーは、業務の流れを良く知り、現在および将来の方針、業務、傾向について詳しく理解する能力を指します。単に目の前の仕事をこなすだけでなく、ビジネス全体の文脈の中で自分の役割を理解することが求められます。

このコンピテンシーが高い人は、「業務の流れを良く知っている」「現在および予想される将来の方針、業務、傾向や、自分の業務や所属する組織に変化をもたらす情報について詳しく知っている」「競争を知っている」「市場で戦略や戦術がどのように機能するかを知っている」といった特徴があります。つまり、業界や市場の動向を把握し、それを自分の仕事に活かすことができるのです。

例えば、自社の製品やサービスがどのように市場で位置づけられているかを理解する、競合他社の動向に注目する、業界のトレンドや技術の進化を把握する、経済状況や規制の変化が自社のビジネスに与える影響を予測するなどの行動が、ビジネスに対する眼識・洞察力の表れです。また、社内の異なる部門がどのように連携しているかを理解することも重要です。

ただし、このコンピテンシーが「強調されすぎ」ると、「個人の技能や対人技能、また管理技能やリーダーシップ技能を顧みないで、業界やビジネス上の知識や技能をむやみに展開/開発し、またそれに依存しする」といったリスクがあります。ビジネス知識に偏りすぎると、人間関係や組織運営の側面が疎かになることもあるのです。

ビジネスに対する眼識・洞察力を高めるためには、まず業界や市場の情報を積極的に収集することが大切です。業界誌やニュース、専門書などを定期的にチェックし、最新の動向を把握しましょう。また、社内の異なる部門の人と交流し、様々な視点からビジネスを理解することも効果的です。さらに、自社の戦略や方針について理解を深め、それが市場でどのように機能しているかを観察することも重要です。そして、得た知識を実際の業務に活かす習慣をつけることで、理解が深まります。

職務的・専門的スキル

「職務的・専門的スキル」というコンピテンシーは、職務および技術的な知識やスキルを持ち、高レベルの達成度で任務を果たす能力を指します。自分の専門分野において、確かな知識と技術を持ち、それを効果的に活用することが求められます。

このコンピテンシーが高い人は、「職務および技術的な知識やスキルを持ち、高レベルの達成度で任務を果たすことができる」という特徴があります。つまり、自分の専門分野において、理論だけでなく実践的なスキルも備えているのです。

例えば、自分の専門分野の最新の知識や技術を学び続ける、複雑な問題に対して専門知識を活用して解決策を提案する、専門的な質問に対して的確に回答する、自分の専門知識を他者に分かりやすく説明するなどの行動が、職務的・専門的スキルの表れです。また、自分の専門分野の限界を理解し、必要に応じて他の専門家と協力することも重要です。

ただし、このコンピテンシーが「強調されすぎ」ると、「あまりにも狭量であると見られる」「個人の技能や対人技能、また管理技能やリーダーシップ技能を顧みないで、専門的な知識や職能上の知識や技能をむやみに展開/開発し、またそれに依存しする」「深い専門的な知識や技能を、曖昧さやリスクを避けるために用いる」といったリスクがあります。専門知識に偏りすぎると、視野が狭くなったり、チームワークが疎かになったりすることもあるのです。

職務的・専門的スキルを高めるためには、まず自分の専門分野の基礎をしっかりと固めることが大切です。基本的な理論や方法論を理解し、それを実践的な場面で活用する経験を積みましょう。また、専門分野の最新の動向や技術を学び続ける姿勢も重要です。さらに、自分の専門知識を他者に分かりやすく説明する能力を磨くことも効果的です。そして、専門知識を実際の業務課題に適用し、成果を出す経験を積むことで、スキルが深まります。

顧客志向の実践

「顧客志向」というコンピテンシーは、組織内外の顧客の期待や要求を満たすことを一義的に考える能力を指します。単に言われたことに対応するだけでなく、顧客の真のニーズを理解し、それに応える価値を提供することが求められます。

このコンピテンシーが高い人は、「組織内外の顧客の期待や要求を満たすことを一義的に考える」「最初に顧客からの情報を入手し、製品やサービスの向上に役立てる」「顧客を意識して行動する」「顧客との有効な関係を維持し、彼らの信頼と尊敬を勝ち取る」といった特徴があります。つまり、顧客の視点に立って考え、行動できるのです。

例えば、顧客の声に耳を傾け、そのニーズや課題を理解する、顧客からのフィードバックを製品やサービスの改善に活かす、顧客の期待を超える価値を提供する、顧客との長期的な信頼関係を構築するなどの行動が、顧客志向の表れです。また、直接顧客と接する機会がない部門でも、最終的な顧客価値を意識して業務に取り組むことが重要です。

ただし、このコンピテンシーが「強調されすぎ」ると、「顧客の要望に過剰に対応する」「理不尽な顧客の要求に対応するために、実績のあるプロセスやスケジュールを変更しようとする」「例外を作りすぎるために、他者が学んで従わなければならない方針や手法やプロセスに一貫性がない」「現在の顧客の需要に固執するあまりに、現状打破の機会を逃す」といったリスクがあります。顧客志向が過ぎると、組織の効率性や一貫性、長期的な戦略が損なわれることもあるのです。

顧客志向を高めるためには、まず顧客の声に耳を傾け、そのニーズや課題を深く理解することが大切です。顧客との対話や調査を通じて、表面的な要望だけでなく、根本的なニーズを把握しましょう。また、顧客の業界や事業環境についても理解を深めることで、より価値のある提案ができるようになります。さらに、顧客からのフィードバックを真摯に受け止め、改善に活かす姿勢も重要です。そして、顧客との信頼関係を構築し、長期的なパートナーシップを育むことで、より深い顧客理解につながります。

結果を出すための意欲

「結果を出すための意欲」というコンピテンシーは、目的を達成するために頼りにされ、常に高い成果を出す能力を指します。単に努力するだけでなく、実際に成果につなげることが求められます。

このコンピテンシーが高い人は、「目的を達成するために頼りにされる」「常に一定して最優秀成績者の一人である」「ボトムラインを非常に重視する」「成果を出すために自分自身や他者をしっかりと前進させる」といった特徴があります。つまり、目標に向かって粘り強く取り組み、結果を出すことにこだわるのです。

例えば、明確な目標を設定し、それに向かって計画的に行動する、障害や困難に直面しても諦めずに取り組む、自分の成果に責任を持ち、約束したことは必ず実行する、チームの成果を高めるためにメンバーを鼓舞するなどの行動が、結果を出すための意欲の表れです。また、常に効率性や効果を意識し、より良い方法を模索する姿勢も重要です。

ただし、このコンピテンシーが「強調されすぎ」ると、「人、チーム、必要なプロセス、または規範や倫理に妥当な利害関係がないにもかかわらず、すべてのコストをかけて成果を求める」「成果を要求するプレッシャーのために、人の入れ替わりが激しい」「チーム精神を打ち立てない」「成功を称え、共有することがない」「極めて自己中心的である」といったリスクがあります。結果へのこだわりが過ぎると、人間関係や倫理観、長期的な成長が犠牲になることもあるのです。

結果を出すための意欲を高めるためには、まず明確で具体的な目標を設定することが大切です。何を達成したいのか、どのような成果を出したいのかを具体的にイメージしましょう。また、目標達成のための計画を立て、進捗を定期的に確認する習慣も重要です。さらに、障害や困難に直面したときの対処法を学び、粘り強く取り組む姿勢を養うことも効果的です。そして、成果を出したときに適切に評価し、次の目標に向けてモチベーションを維持することも大切です。

組織化力の向上

「組織化力」というコンピテンシーは、物事を処理するためにリソース(人員、資金調達、材料、支援)を、目的に添って整理できる能力を指します。限られたリソースを効果的に配分し、効率的に目標を達成することが求められます。

このコンピテンシーが高い人は、「物事を処理するためにリソース(人員、資金調達、材料、支援)を、目的に添って整理できる」「目標を達成するために、複数のことを同時にうまく指揮できる」「リソースを効果的、効率的に活用する」「有用な方法で情報やファイルを整理する」といった特徴があります。つまり、限られたリソースを最大限に活用し、効率的に成果を上げることができるのです。

例えば、プロジェクトの目標に合わせて適切なリソースを配分する、複数のタスクの優先順位をつけて効率的に進める、情報やデータを分かりやすく整理して必要なときにすぐに取り出せるようにする、無駄を省いてプロセスを最適化するなどの行動が、組織化力の表れです。また、予測不可能な状況にも柔軟に対応し、リソースを再配分する能力も重要です。

ただし、このコンピテンシーが「強調されすぎ」ると、「正常な混乱に耐えられない」「あまりに頻繁に、自分のやり方で物事を行おうとする」「提案や意見を素直に受け取らない」「計画通りに物事が進まないと、効率が悪くなる」といったリスクがあります。組織化にこだわりすぎると、柔軟性が失われたり、他者の意見や創造性が抑制されたりすることもあるのです。

組織化力を高めるためには、まず目標や優先順位を明確にすることが大切です。何を達成したいのか、何が最も重要かを把握しましょう。また、利用可能なリソースを把握し、それを目標達成のためにどう配分するかを計画することも重要です。さらに、情報やデータを効率的に管理するシステムやツールを活用することも効果的です。そして、計画と実行のバランスを取り、必要に応じて柔軟に調整する姿勢も大切です。

計画性の磨き方

「計画性」というコンピテンシーは、仕事やプロジェクトの範囲や困難さを見渡し、適切な計画を立てる能力を指します。単に目標を設定するだけでなく、それを達成するための具体的なステップを考え、実行することが求められます。

このコンピテンシーが高い人は、「仕事やプロジェクトの範囲や困難さを見渡すことができる」「目的や目標を設定できる」「仕事をプロセスの各段階に振り分けることができる」「スケジュールや任務と人員の割り当てを作成する」「問題点と障害を吟味し、調整する」「目標までの達成度を測定する」「成果を評価する」といった特徴があります。つまり、目標達成のための道筋を明確にし、それに沿って進めることができるのです。

例えば、プロジェクトの全体像を把握し、必要なタスクを洗い出す、タスクの依存関係や所要時間を考慮してスケジュールを立てる、リスクを予測し対策を考える、進捗を定期的に確認し必要に応じて計画を調整するなどの行動が、計画性の表れです。また、計画を関係者と共有し、理解と協力を得ることも重要です。

ただし、このコンピテンシーが「強調されすぎ」ると、「基準、規則、手順、構造に過度に従う」「仕事の人間的要素を無視する」「柔軟性がなく、急激な変化に対応できない」といったリスクがあります。計画にこだわりすぎると、変化への対応力が低下したり、人間関係の側面が疎かになったりすることもあるのです。

計画性を高めるためには、まず目標を明確にし、それを達成するために必要なステップを洗い出すことが大切です。大きな目標を小さな達成可能なタスクに分解し、それぞれの依存関係や所要時間を考慮しましょう。また、リソースの制約や潜在的なリスクを考慮し、現実的な計画を立てることも重要です。さらに、計画の進捗を定期的に確認し、必要に応じて調整する習慣も効果的です。そして、計画と柔軟性のバランスを取り、変化に対応できる余裕を持つことも大切です。

仕組みを使った管理

「仕組みを使った管理」というコンピテンシーは、遠隔地からの管理を可能にする手法、工程、手順を設計できる能力を指します。直接的な監督ではなく、システムやプロセスを通じて成果を上げることが求められます。

このコンピテンシーが高い人は、「遠隔地からの管理を可能にする手法、工程、手順を設計できる」「干渉しないで進んで他者に管理を任せる」「他所にいて、他者を通じて仕事をさせることができる」「遠隔地から人や結果に影響を与えることができる」といった特徴があります。つまり、直接的な指示や監督に頼らず、システムやプロセスを通じて成果を上げることができるのです。

例えば、明確な目標と指標を設定し、それに基づいた評価システムを構築する、必要な情報が適切に共有される仕組みを作る、問題が発生した際の対応プロセスを標準化する、自律的に動ける環境を整えるなどの行動が、仕組みを使った管理の表れです。また、直接的な監督ではなく、結果に基づいた評価を行うことも重要です。

ただし、このコンピテンシーが「強調されすぎ」ると、「細かいことを話しにくい」「細かいことに無関心である」「物事を気楽に成り行きに任せすぎる」「否定的な事態に驚く」「既存のシステムの変更に時間がかかる」といったリスクがあります。システムに頼りすぎると、人間的な側面や細部への配慮が疎かになることもあるのです。

仕組みを使った管理のスキルを高めるためには、まず明確な目標と期待値を設定することが大切です。何を達成すべきか、どのような成果を期待しているかを具体的に伝えましょう。また、必要な情報が適切に共有される仕組みを作ることも重要です。さらに、問題が発生した際の対応プロセスを標準化し、誰もが適切に対応できるようにすることも効果的です。そして、定期的なフィードバックと評価の仕組みを整え、継続的な改善を促す環境を作ることも大切です。

TQM/再構築能力

「TQM/再構築能力」というコンピテンシーは、社内外のお客様が求めるニーズや要件に答えられる、最高品質の製品とサービスを提供できるよう尽力する能力を指します。継続的な改善と根本的な変革の両方を通じて、品質と効率を高めることが求められます。

このコンピテンシーが高い人は、「社内外のお客様が求めるニーズや要件に答えられる、最高品質の製品とサービスを提供できるよう尽力している」「データに裏付けられた支援と管理によって継続的な向上に努めている」「プロセスをゼロから再構築することもいとわない」「助言や実験的な試みも快く受け入れる」「最も効率的で効果的な業務プロセスにつながる、ラーニング環境を創出する」といった特徴があります。つまり、現状に満足せず、常に改善と革新を追求できるのです。

例えば、顧客のニーズを深く理解し、それに基づいた品質基準を設定する、データを収集・分析して改善点を特定する、継続的な小さな改善と根本的な変革の両方を行う、失敗を恐れずに新しいアプローチを試す、学習と改善の文化を醸成するなどの行動が、TQM/再構築能力の表れです。また、全員参加型の改善活動を促進することも重要です。

ただし、このコンピテンシーが「強調されすぎ」ると、「品質や再構築を強く提唱し、他のあらゆることに最優先させる」「役立つよりも混乱のもとになる、わずかな変更をしばしば行う」「完全に社内の人でなければ、その人を拒絶する」「1人の指導者や1つの方法のみを頼りにしすぎる」といったリスクがあります。改善や変革にこだわりすぎると、安定性や人間関係が損なわれることもあるのです。

TQM/再構築能力を高めるためには、まず顧客視点を持つことが大切です。内部の都合ではなく、顧客にとっての価値を基準に考えましょう。また、データに基づいた意思決定を行うことも重要です。感覚や経験だけでなく、客観的なデータを収集・分析して改善点を特定することが効果的です。さらに、継続的な小さな改善と根本的な変革の両方のアプローチを使い分けることも大切です。そして、失敗を学びの機会と捉え、実験的な試みを奨励する文化を作ることで、組織全体の改善力が高まります。

この章の実践ポイント

ビジネス感覚を磨くコンピテンシーは、ビジネスの文脈の中で効果的に行動し、成果を上げるために不可欠なものです。これらのコンピテンシーを高めることで、組織の中で価値を生み出し、キャリアを成功させることができます。

まず、ビジネスに対する眼識・洞察力と職務的・専門的スキルを高めるためには、業界や市場の動向に常にアンテナを張り、自分の専門分野の知識を深め続けることが大切です。また、それらの知識を実践に活かし、具体的な成果につなげる意識も重要です。

次に、顧客志向と結果を出すための意欲においては、顧客の視点に立って考え、その期待を超える価値を提供することが求められます。また、目標に向かって粘り強く取り組み、結果にこだわる姿勢も大切です。

また、組織化力と計画性においては、限られたリソースを効果的に配分し、目標達成のための具体的なステップを考えることが重要です。また、計画と実行のバランスを取り、必要に応じて柔軟に調整する姿勢も効果的です。

さらに、プロセス・マネジメントと仕組みを使った管理においては、効率的かつ効果的なプロセスを設計し、それを通じて成果を上げることが求められます。また、直接的な監督ではなく、システムやプロセスを通じて成果を上げる視点も重要です。

最後に、TQM/再構築能力においては、継続的な改善と根本的な変革の両方を通じて、品質と効率を高めることが大切です。また、データに基づいた意思決定と全員参加型の改善活動を促進する姿勢も効果的です。

ビジネス感覚を磨くコンピテンシーを高めるためには、日々の業務の中で意識的に実践し、経験から学ぶことが大切です。また、先輩や上司からのフィードバックを積極的に求め、自己成長につなげる姿勢も重要です。これらのコンピテンシーを総合的に高めることで、ビジネスパーソンとしての価値が高まり、キャリアの成功につながるでしょう。

第7章:組織で生き抜く コンピテンシー

組織ダイナミクスに対する俊敏性

「組織ダイナミクスに対する俊敏性」というコンピテンシーは、組織が機能する仕組みに関する知識があり、公式のルートと非公式のルートの両方を通じて物事を処理する方法を知っている能力を指します。単に組織図や規則を理解するだけでなく、組織の文化や暗黙のルールも把握し、それに応じて行動できることが求められます。

このコンピテンシーが高い人は、「組織が機能する仕組みに関する知識がある」「公式のルートと非公式のルートの両方を通じて物事を処理する方法を知っている」「重用な方針、慣例、手順の背景にある由来や理由を理解している」「組織文化を理解している」といった特徴があります。つまり、組織の表と裏の両方を理解し、効果的に動くことができるのです。

例えば、新しいアイデアを実現するために適切な意思決定者に働きかける、非公式なネットワークを活用して情報を収集する、組織の優先事項や価値観に合わせて提案を調整する、組織の文化に合った形で変革を推進するなどの行動が、組織ダイナミクスに対する俊敏性の表れです。また、組織の力学を理解し、それに応じて自分のアプローチを調整することも重要です。

ただし、このコンピテンシーが「強調されすぎ」ると、「有利になるよう駆け引きする時間が多い」「本質的でない問題に時間と労力をかけすぎる」「あまりにも政治的であると見られる」といったリスクがあります。組織の力学に対する理解が過ぎると、本質的な仕事よりも政治的な駆け引きに時間を費やしてしまうこともあるのです。

組織ダイナミクスに対する俊敏性を高めるためには、まず組織の公式な構造や意思決定プロセスを理解することが大切です。組織図や規則、方針などを把握しましょう。また、非公式なネットワークや影響力の流れも観察し、理解することも重要です。さらに、組織の歴史や文化、価値観についても学び、それが意思決定や行動にどのように影響しているかを把握することも効果的です。そして、様々な部門や階層の人々と関係を構築し、多様な視点から組織を理解することも大切です。

政治的手腕の磨き方

「政治的手腕」というコンピテンシーは、複雑な政治的状況を、効果的かつ迅速にうまく渡り抜ける能力を指します。単に政治的な駆け引きをするのではなく、様々な利害関係を理解し、建設的な形で影響力を行使することが求められます。

このコンピテンシーが高い人は、「複雑な政治的状況を、効果的かつ迅速にうまく渡り抜ける」「人や組織の機能状態に敏感である」「危険がどこに潜んでいるかを理解し、それに従ってアプローチの仕方を計画する」「会社の方針を組織の生存に必要なものと見なし、その現実に合わせようとする」「迷宮に入ったときもうまく対処できる人である」といった特徴があります。つまり、組織の政治的な側面を理解し、それを建設的に活用できるのです。

例えば、重要な提案をする前に主要な利害関係者の支持を得る、異なる部門や立場の人々の利害を調整して合意を形成する、敏感な問題に対して適切なタイミングと方法でアプローチする、組織の政治的な現実を理解しつつも誠実さを保つなどの行動が、政治的手腕の表れです。また、自分の言動が組織の政治的な文脈の中でどのように解釈されるかを意識することも重要です。

ただし、このコンピテンシーが「強調されすぎ」ると、「あまりにも政治的であると見られる」「信頼されていない」「本当のことを人に伝えずに、人が聞きたがっていることを伝える」「知っていることを言いすぎる」「操り方がうまく策略に長けていると見える」といったリスクがあります。政治的な駆け引きに頼りすぎると、誠実さや信頼性が損なわれることもあるのです。

政治的手腕を高めるためには、まず組織内の様々な利害関係や力関係を理解することが大切です。誰が影響力を持っているのか、どのような利害関係があるのかを把握しましょう。また、自分の提案や行動が他者にどのような影響を与えるかを考え、それに応じたアプローチを取ることも重要です。さらに、信頼関係を構築し、誠実さを保ちながら影響力を行使する方法を学ぶことも効果的です。そして、組織の政治的な現実を受け入れつつも、建設的な形で変革を推進する姿勢も大切です。

経営上層部に対する落ち着いた対応

「経営上層部に対する落ち着いた対応」というコンピテンシーは、上役にゆったりと緊張しないで対応できる能力を指します。単に上層部と話せるだけでなく、彼らの視点や関心事を理解し、効果的にコミュニケーションを取ることが求められます。

このコンピテンシーが高い人は、「上役にゆったりと緊張しないで対応できる」「緊張や気後れなく上役に対面することができる」「上役の考え方や仕事の進め方を理解している」「相手の言葉を話し、彼らの問題に対応することで、一緒に仕事を進める上での最良の方法を判断することができる」「適切でかつ前向きに見られるよう巧みにアプローチすることができる」といった特徴があります。つまり、上層部との関係において自信を持ち、効果的に交流できるのです。

例えば、上層部に対して明確かつ簡潔に情報を伝える、彼らの視点や優先事項を理解して話を合わせる、質問や意見を求められたときに自信を持って応える、適切なタイミングで重要な問題を提起するなどの行動が、経営上層部に対する落ち着いた対応の表れです。また、上層部との交流を学びの機会と捉え、積極的に関わる姿勢も重要です。

ただし、このコンピテンシーが「強調されすぎ」ると、「上司を操りすぎる」「あまりにも政治的で野心的すぎると見られる」「上役の経営幹部と一緒に過ごす時間が長すぎ、彼らの立場を繰り返し口にし、リーダーシップの意味や有用性を過大評価する」「キャリアを主流派に依存しすぎている」「機密情報の扱いにだらしない」といったリスクがあります。上層部との関係に頼りすぎると、他の同僚や部下との関係が疎かになることもあるのです。

経営上層部に対する落ち着いた対応のスキルを高めるためには、まず上層部の視点や関心事を理解することが大切です。彼らが何を重視し、どのような情報を求めているかを把握しましょう。また、簡潔で明確なコミュニケーションのスキルを磨くことも重要です。上層部は時間が限られているため、要点を絞った伝え方が効果的です。さらに、自信を持って自分の意見を述べる練習をすることも効果的です。そして、上層部との交流の機会を積極的に活用し、経験を積むことで、徐々に落ち着いた対応ができるようになります。

管理者としての度胸・勇気

「管理者としての度胸・勇気」というコンピテンシーは、言うべきことを留保しない能力を指します。単に意見を述べるだけでなく、困難な状況でも必要な行動を取る勇気が求められます。

このコンピテンシーが高い人は、「言うべきことを留保しない」「他者に、最新の、率直な、完全な、『すぐに実行可能な』前向きの、矯正的なフィードバックを与える」「人に彼らの立場を認識させる」「人の対人問題または状況の問題(部下を除く)に迅速に直接立ち向かう」「必要な場合に否定的な行動を取ることを恐れない」といった特徴があります。つまり、困難な状況でも真実を語り、必要な行動を取ることができるのです。

例えば、問題のある行動に対して率直にフィードバックを提供する、不人気だが必要な決断を下す、上層部に対しても必要なら反対意見を述べる、倫理的な問題に対して声を上げるなどの行動が、管理者としての度胸・勇気の表れです。また、困難な状況でも冷静さを保ち、建設的なアプローチを取ることも重要です。

ただし、このコンピテンシーが「強調されすぎ」ると、「批判的すぎる」「フィードバックを与えるとき、または課題に取り組むときに、あまりにも率直で高圧的である」「あまりにも否定的で、あまりにも前向きな内容に乏しいフィードバックを与える」「暗い面を強調しすぎる」「争いごとの処理が多すぎる」といったリスクがあります。率直さが過ぎると、人間関係が損なわれたり、建設的な対話が困難になったりすることもあるのです。

管理者としての度胸・勇気を高めるためには、まず自分の価値観や原則を明確にすることが大切です。何が重要で、どのような状況でも妥協できないことは何かを把握しましょう。また、建設的なフィードバックの伝え方を学ぶことも重要です。率直でありながらも、相手を尊重し、成長を促す伝え方を身につけることが効果的です。さらに、困難な状況での感情管理のスキルを磨くことも大切です。そして、小さな勇気ある行動から始め、徐々に自信をつけていくことで、より大きな勇気を発揮できるようになります。

誠実さと信頼性の構築

「誠実さと信頼性」というコンピテンシーは、広く信頼されている能力を指します。単に正直であるだけでなく、一貫性のある行動や約束を守ることなど、信頼される人物としての総合的な特性が求められます。

このコンピテンシーが高い人は、「広く信頼されている」「率直で信頼のおける人だと見られている」「ありのままの実態を適切で好意的な方法で提示できる」「秘密を漏らさない」「間違いを認める」「個人的利益について自分をはっきり伝える」といった特徴があります。つまり、言動に一貫性があり、他者から信頼される存在なのです。

例えば、約束したことは必ず守る、嘘をつかない、機密情報を適切に管理する、ミスや失敗を素直に認める、自分の利害関係を明確にする、言行一致しているなどの行動が、誠実さと信頼性の表れです。また、困難な状況でも誠実さを保ち、倫理的に行動することも重要です。

ただし、このコンピテンシーが「強調されすぎ」ると、「時にあまりにも直接的すぎる」「そのため、人の不意を突き、イライラさせたりする」「混乱を招くほど、透明性と誠実さを迫る」「『事実のみ』を重視するあまり、合理的な結論を導き出さず、意見を述べることも、責任を問うことも、対立に向き合うこともしない」といったリスクがあります。誠実さが過ぎると、相手の感情への配慮が足りなくなったり、必要な判断や行動が遅れたりすることもあるのです。

誠実さと信頼性を高めるためには、まず自分の言動の一貫性を意識することが大切です。言ったことは実行し、約束は必ず守る習慣をつけましょう。また、ミスや失敗を素直に認め、責任を取る勇気も重要です。さらに、他者の秘密や機密情報を適切に管理することも信頼を築く上で欠かせません。そして、自分の利害関係や立場を明確にし、透明性を保つことで、より深い信頼関係を構築することができます。

倫理観と価値観の重要性

「倫理観と価値観」というコンピテンシーは、良いときも悪いときも、適切で効果的な一連の基本的な価値観と信念を維持する能力を指します。単に倫理的な知識を持つだけでなく、それに基づいて一貫して行動することが求められます。

このコンピテンシーが高い人は、「良いときも悪いときも、適切で効果的な一連の基本的な価値観と信念を維持する」「それらの価値観に沿って行動する」「正しい価値観には報い、他は認めない」「自分が常々言っていることを実行する」といった特徴があります。つまり、明確な価値観を持ち、それに基づいて一貫した行動を取るのです。

例えば、困難な状況でも倫理的な判断を下す、短期的な利益よりも長期的な信頼関係を優先する、組織の価値観に沿った行動を促進する、不正や不適切な行為に対して声を上げるなどの行動が、倫理観と価値観のコンピテンシーの表れです。また、自分の価値観を明確に伝え、それに基づいた意思決定を行うことも重要です。

ただし、このコンピテンシーが「強調されすぎ」ると、「不適切だと思ったときに、信念や価値観に基づいて争う」「原則、価値観、信念が試されると思う状況に敏感すぎる」「頑固で、変化や妥協の必要性に鈍感である」「同じ価値観を持たない人に異常に批判的である」「倫理観を述べて討議を打ち切る」といったリスクがあります。価値観にこだわりすぎると、柔軟性が失われたり、他者との協力が難しくなったりすることもあるのです。

倫理観と価値観のコンピテンシーを高めるためには、まず自分の核となる価値観を明確にすることが大切です。何を大切にし、どのような原則に基づいて行動するかを考えましょう。また、その価値観に基づいた意思決定や行動を日常的に実践することも重要です。さらに、倫理的なジレンマに対処するための思考法や判断基準を学ぶことも効果的です。そして、自分の価値観を押し付けるのではなく、多様な価値観を尊重しながらも、自分の原則は守る柔軟さとバランス感覚も大切です。

交渉力の磨き方

「交渉力」というコンピテンシーは、厳しい状況で、内外のグループの両方と巧みに交渉できる能力を指します。単に自分の主張を通すだけでなく、相手の立場も理解し、双方が納得できる解決策を見出すことが求められます。

このコンピテンシーが高い人は、「厳しい状況で、内外のグループの両方と巧みに交渉できる」「意見の相違を最小限の議論で決着することができる」「対人関係に傷をつけることなく譲歩を勝ち取ることができる」「外交的であるだけではなく、率直で強制的な態度もとることができる」「交渉に向けて他のグループの信頼をすぐに獲得する」「物事のタイミングをよくわかっている」といった特徴があります。つまり、状況に応じて柔軟に対応しながら、最適な結果を導き出すことができるのです。

例えば、交渉の前に相手の立場や利害関係を理解する、共通の利益を見出して協力関係を構築する、感情に流されず冷静に対応する、適切なタイミングで譲歩と主張のバランスを取る、長期的な関係構築を意識するなどの行動が、交渉力の表れです。また、交渉の場だけでなく、日常的なコミュニケーションの中でも交渉のスキルを活用することが重要です。

ただし、このコンピテンシーが「強調されすぎ」ると、「人の受けたダメージをそのまま放置する」「人の感情を無視する」「常に勝利を求める」「あまりにも長い間地位にしがみつく」「あまりに順応し、退きたがらない」「なにごともあやふやにする」「物事の決断に時間がかかりすぎる」といったリスクがあります。交渉にこだわりすぎると、関係性が損なわれたり、必要な決断が遅れたりすることもあるのです。

交渉力を高めるためには、まず相手の立場や利害関係を理解することが大切です。何を重視し、何を譲れるのかを把握しましょう。また、自分の立場や優先事項も明確にし、何が交渉可能で何が譲れないのかを整理することも重要です。さらに、Win-Winの解決策を見出すための創造的な思考力も効果的です。そして、感情をコントロールし、冷静に対応するスキルも大切です。

自立性・独立性の育て方

「自立性・独立性」というコンピテンシーは、自分の立場を明らかにしようとする能力を指します。単に独自の意見を持つだけでなく、それを適切に表明し、必要なら一人でも立ち向かう勇気が求められます。

このコンピテンシーが高い人は、「自分の立場を明らかにしようとする」「個人的な責任を回避しない」「厳しい状況で頼りにされる」「あるアイディアまたは地位に対する唯一の支持者になるのをいとわない」「割当てられた厳しい仕事に一人で取り組むことができる」といった特徴があります。つまり、周囲の圧力に流されず、自分の信念に基づいて行動できるのです。

例えば、多数派と異なる意見でも必要なら発言する、失敗の責任を他者に転嫁しない、困難な状況でも自分の役割を果たす、不人気だが必要な決断を下す、一人でも取り組むべき課題に挑戦するなどの行動が、自立性・独立性の表れです。また、他者の意見も尊重しつつ、自分の考えをしっかり持つバランス感覚も重要です。

ただし、このコンピテンシーが「強調されすぎ」ると、「一匹狼であり、チームプレイヤーやチームビルダーとして失格である」「人にしかるべき名誉を与えない」「あまりに自己中心的に見られる」「長期的な対人関係を作らない」といったリスクがあります。独立性が過ぎると、協調性が失われ、チームの力を活かせなくなることもあるのです。

自立性・独立性を高めるためには、まず自分の価値観や信念を明確にすることが大切です。何を大切にし、どのような原則に基づいて行動するかを考えましょう。また、自分の意見を適切に表現するコミュニケーションスキルも重要です。さらに、批判や反対意見に対処する心理的な強さも効果的です。そして、独立性と協調性のバランスを取り、状況に応じた適切な行動を選択する判断力も大切です。

情報の提供の重要性

「情報の提供」というコンピテンシーは、人がその仕事をする上で知りたい情報を提供し、チーム、ユニット、組織のメンバーであることに心地よさを抱かせる情報を提供する能力を指します。単に情報を持っているだけでなく、それを適切なタイミングと方法で共有することが求められます。

このコンピテンシーが高い人は、「人がその仕事をする上で知りたい情報を提供し、チーム、ユニット、組織のメンバーであることに心地よさを抱かせる情報を提供する」「正確な意思決定ができるよう、人に情報を与える」「情報をタイムリーに出す」といった特徴があります。つまり、必要な情報を適切に共有することで、チームの効率性や一体感を高めることができるのです。

例えば、重要な決定や変更について速やかに関係者に伝える、必要な情報を分かりやすく整理して提供する、定期的に進捗状況や成果を共有する、情報の背景や意味も含めて伝えるなどの行動が、情報の提供の表れです。また、一方的に情報を流すだけでなく、相手の理解度や反応を確認することも重要です。

ただし、このコンピテンシーが「強調されすぎ」ると、「与える情報が多すぎる」「人が扱えないような情報、または使えなくなるような先行情報を与えて人の調子を狂わせる」といったリスクがあります。情報提供が過剰になると、重要な情報が埋もれたり、相手に混乱や負担を与えたりすることもあるのです。

情報の提供のスキルを高めるためには、まず相手のニーズや状況を理解することが大切です。何の情報が、いつ、どのように提供されると役立つかを考えましょう。また、情報を整理し、優先順位をつけて伝える能力も重要です。さらに、適切なコミュニケーションチャネルを選択することも効果的です。そして、情報提供後のフォローアップを行い、理解度や効果を確認する習慣も大切です。

この章の実践ポイント

組織で生き抜くコンピテンシーは、組織の中で効果的に行動し、影響力を発揮するために不可欠なものです。これらのコンピテンシーを高めることで、組織の政治的な側面にも対応しながら、自分の価値を最大限に発揮することができます。

まず、組織ダイナミクスに対する俊敏性と政治的手腕を高めるためには、組織の公式・非公式な構造や力関係を理解し、それに応じたアプローチを取ることが大切です。また、様々な利害関係を把握し、建設的な形で影響力を行使する方法を学ぶことも重要です。

次に、経営上層部に対する落ち着いた対応と管理者としての度胸・勇気においては、自信を持って上層部と交流し、必要なら率直に意見を述べる勇気が求められます。また、困難な状況でも真実を語り、必要な行動を取る姿勢も大切です。

また、誠実さと信頼性、倫理観と価値観においては、一貫した行動や約束を守ることなど、信頼される人物としての特性を育むことが重要です。また、明確な価値観を持ち、それに基づいて一貫した行動を取ることも効果的です。

さらに、交渉力と自立性・独立性においては、状況に応じて柔軟に対応しながら最適な結果を導き出す能力と、周囲の圧力に流されず自分の信念に基づいて行動する勇気が求められます。また、独立性と協調性のバランスを取ることも重要です。

最後に、情報の提供においては、必要な情報を適切なタイミングと方法で共有することで、チームの効率性や一体感を高めることが大切です。また、情報の質と量のバランスを考慮することも効果的です。

組織で生き抜くコンピテンシーを高めるためには、組織の現実を理解し受け入れつつも、自分の価値観や原則は守る柔軟さとバランス感覚が重要です。また、信頼関係を構築し、誠実さを保ちながら影響力を行使する方法を学ぶことも大切です。これらのコンピテンシーを総合的に高めることで、組織の中で信頼され、影響力を持つ存在になることができるでしょう。

第8章:未来を創る コンピテンシー

創造性の育み方

「創造性」というコンピテンシーは、新しくユニークなアイディアを多く思い付く能力を指します。単に奇抜なアイデアを出すだけでなく、それが実際に価値を生み出すような創造性が求められます。

このコンピテンシーが高い人は、「新しくユニークなアイディアを多く思い付く」「以前関係のなかった考えの中からすぐに関係を見出せる」「ブレインストーミングの場で、独自性や付加価値を前面に押し出す傾向がある」といった特徴があります。つまり、既存の枠組みにとらわれず、新たな視点や解決策を生み出すことができるのです。

例えば、問題に対して複数の角度から考える、異なる分野の知識や経験を組み合わせる、「当たり前」を疑い新しい方法を模索する、失敗を恐れず新しいアイデアを試すなどの行動が、創造性の表れです。また、他者のアイデアに触発されて発展させる柔軟性も重要です。

ただし、このコンピテンシーが「強調されすぎ」ると、「わずかばかりの生産性改善のアイディアに夢中に取り組み、部下の時間を浪費する」「同時にあまりにも多くの事に関わる」「アイディアばかりでその後をフォローしない」「細部が詰められていない、または大雑把である」「一匹狼であり、チームプレイヤーとして失格である」「自分より創造性に劣る人たちとうまく付き合えない」といったリスクがあります。創造性にこだわりすぎると、実行力や協調性が損なわれることもあるのです。

創造性を高めるためには、まず多様な経験や知識を積むことが大切です。異なる分野の本を読んだり、新しい場所に行ったり、様々な人と交流したりすることで、発想の幅が広がります。また、「正解」を求めず、多様な可能性を探る習慣をつけることも重要です。さらに、アイデアを記録する習慣や、定期的にブレインストーミングの時間を設けることも効果的です。そして、失敗を恐れず、新しいアイデアを試す勇気も大切です。

イノベーション・マネジメント

「イノベーション・マネジメント」というコンピテンシーは、他人の創造的なアイディアを市場に持ち込む能力を指します。単にアイデアを生み出すだけでなく、それを実現し、価値を創出するプロセスを管理することが求められます。

このコンピテンシーが高い人は、「他人の創造的なアイディアを市場に持ち込む」「どの創造的なアイディアや提案が有効かを良く判断できる」「他人の創造的なプロセスの管理についてわきまえている」「効果的なブレインストーミングを支援できる」「有望なアイディアが市場でどのように展開するかを推定できる」といった特徴があります。つまり、創造的なプロセスを理解し、それを実際のビジネス価値につなげることができるのです。

例えば、チームのブレインストーミングを効果的にファシリテートする、多様なアイデアの中から実現可能で価値のあるものを見極める、アイデアを実現するための計画を立て実行する、失敗から学び次に活かすなどの行動が、イノベーション・マネジメントの表れです。また、組織内の創造的な文化を育む環境づくりも重要です。

ただし、このコンピテンシーが「強調されすぎ」ると、「新しいことを目指して判断を誤り、古いことを拒む」「創造性のある人を評価し、創造性がそれほど多くない人を低く評価する」「考え方や、計画の仕方があまりにも他人とかけ離れる」といったリスクがあります。新しさにこだわりすぎると、実績のある方法や創造性以外の価値が軽視されることもあるのです。

イノベーション・マネジメントのスキルを高めるためには、まずイノベーションのプロセスを理解することが大切です。アイデア創出から実現までの各段階で何が必要かを把握しましょう。また、多様な視点からアイデアを評価する客観性も重要です。さらに、リスクを適切に管理しながら新しいことに挑戦する勇気も効果的です。そして、失敗を学びの機会と捉え、継続的に改善していく姿勢も大切です。

戦略的俊敏性の磨き方

「戦略的俊敏性」というコンピテンシーは、人に先駆けて明確に予見する能力を指します。単に現状を分析するだけでなく、将来の動向を予測し、それに基づいた戦略を素早く立案・実行することが求められます。

このコンピテンシーが高い人は、「人に先駆けて明確に予見する」「将来の結果や傾向を正確に予想できる」「広範な知識と視野を持っている」「未来志向である」「可能性や見込みについて信頼できる絵やビジョンを描くことができる」「競争力があり、突破口となるような戦略や計画を作ることができる」といった特徴があります。つまり、変化を先取りし、それを機会として活かすことができるのです。

例えば、業界の動向や技術の進化を常に把握する、複数の将来シナリオを想定して準備する、変化の兆候を早期に捉えて対応する、競合との差別化につながる戦略を考案するなどの行動が、戦略的俊敏性の表れです。また、既存の前提や常識を疑い、新たな視点で状況を捉える柔軟性も重要です。

ただし、このコンピテンシーが「強調されすぎ」ると、「あまりにも理論的すぎると見られる」「日々の細かい処理に耐えられない、または忍耐強くそれに対処しない」「計画を不必要に複雑にする」「駆け引きのうまい相手、または単純な相手とうまく意思疎通ができない」といったリスクがあります。戦略や将来ばかりに目を向けると、現在の業務や実行面が疎かになることもあるのです。

戦略的俊敏性を高めるためには、まず広い視野を持つことが大切です。自分の専門分野だけでなく、関連する業界や社会全体の動向にも目を向けましょう。また、情報を多角的に分析し、パターンや傾向を見出す習慣も重要です。さらに、複数の将来シナリオを想定し、それぞれに対する対応策を考えておくことも効果的です。そして、変化を恐れず、むしろ機会として捉える前向きな姿勢も大切です。

ビジョンと目的の管理

「ビジョンと目的の管理」というコンピテンシーは、説得力があり人を触発するビジョン、または目的の核心に触れることを伝達する能力を指します。単に将来像を描くだけでなく、それを人々と共有し、実現に向けて動機づけることが求められます。

このコンピテンシーが高い人は、「説得力があり人を触発するビジョン、または目的の核心に触れることを伝達する」「先の見通しを伝える」「可能性について話す」「楽天的である」「ビジョンの後に続き、その支持を呼び集めるために進行の目安やシンボルを作る」「ビジョンを誰もが共有できるようにする」「ユニット全員または組織全体を触発し、動機付けることができる」といった特徴があります。つまり、魅力的な将来像を描き、それに向かって人々を導くことができるのです。

例えば、組織や部門の目指す姿を明確に描く、ビジョンを分かりやすい言葉で伝える、ビジョン実現のための具体的なステップを示す、進捗を可視化して共有する、困難な状況でも前向きな姿勢を保つなどの行動が、ビジョンと目的の管理の表れです。また、自らがビジョンを体現し、一貫した行動を取ることも重要です。

ただし、このコンピテンシーが「強調されすぎ」ると、「人を置き去りにする」「ビジョンや目的意識を理解しない、または共有しない人に我慢できない」「適切な細部の説明をせず、日常の管理業務への関心がない」「日々の仕事に対するフォローがない」といったリスクがあります。ビジョンにこだわりすぎると、現実的な課題や人々の懸念が軽視されることもあるのです。

ビジョンと目的の管理のスキルを高めるためには、まず自分自身が明確なビジョンを持つことが大切です。組織や部門が目指すべき姿を具体的にイメージしましょう。また、そのビジョンを様々な人に伝わるよう、分かりやすく表現する能力も重要です。さらに、ビジョン実現のための具体的なステップを示し、進捗を共有することも効果的です。そして、困難な状況でも前向きな姿勢を保ち、ビジョンへの信念を示すことも大切です。

広い視野の育て方

「広い視野」というコンピテンシーは、問題や課題について、できる限り広い視野を持つ能力を指します。単に目の前の課題だけでなく、より大きな文脈や長期的な影響を考慮することが求められます。

このコンピテンシーが高い人は、「問題や課題について、できる限り広い視野を持つ」「幅広い個人的およびビジネス上の利害関係を持つ」「将来の見通しをすぐに提示できる」「グローバルな視点で考えることができる」「多くの局面や問題の影響を討議し、それを将来に反映できる」といった特徴があります。つまり、狭い視点にとらわれず、多角的かつ長期的な視点で物事を捉えることができるのです。

例えば、問題を様々な角度から分析する、短期的な影響だけでなく長期的な影響も考慮する、自部門だけでなく組織全体や業界全体の視点で考える、グローバルな動向や異文化の視点も取り入れるなどの行動が、広い視野の表れです。また、異なる立場や意見を尊重し、多様な視点を統合する柔軟性も重要です。

ただし、このコンピテンシーが「強調されすぎ」ると、「即断即決の傾向が強く、それがトラブルを招くことがある」「ある問題を広く眺めて熟考するときに、人を置き去りにする」「現実的な優先順位を設定しない」「常にあまりに多くのもの、または理想的なものを求める」「今ここにない関係を求める」といったリスクがあります。視野が広すぎると、焦点が定まらず、具体的な行動や決断が遅れることもあるのです。

広い視野を育てるためには、まず多様な情報源に触れることが大切です。自分の専門分野だけでなく、関連する分野や全く異なる分野の知識も積極的に取り入れましょう。また、異なる立場や文化の人々と交流し、多様な視点を理解することも重要です。さらに、短期的な視点と長期的な視点の両方を持ち、バランスを取ることも効果的です。そして、常に「なぜ」を問い、物事の背景や関連性を探る習慣も大切です。

プレゼンテーション・スキル

「プレゼンテーション・スキル」というコンピテンシーは、一対一、大/小規模のグループの前、同輩との共同発表、部下/上司の前などのさまざまな公式プレゼンテーションの場面でうまくやれる能力を指します。単に情報を伝えるだけでなく、聴衆を引きつけ、説得し、行動に移してもらうことが求められます。

このコンピテンシーが高い人は、「一対一、大/小規模のグループの前、同輩との共同発表、部下/上司の前などのさまざまな公式プレゼンテーションの場面でうまくやれる」「組織の内外、クールなデータやホットで議論を呼ぶトピックなど、どのような場合でも、プレゼンテーションがうまくできる」「プレゼンテーションの間、注意を引き付けグループのプロセスを管理することができる」「うまくいかなくなったら、途中で戦術を変更できる」といった特徴があります。つまり、様々な状況や聴衆に合わせて効果的にメッセージを伝えることができるのです。

例えば、聴衆のニーズや関心に合わせた内容を準備する、明確で分かりやすい言葉で話す、視覚資料を効果的に活用する、聴衆の反応を見ながら柔軟に対応する、質問に的確に答えるなどの行動が、プレゼンテーション・スキルの表れです。また、自信を持ち、情熱を込めて話すことも重要です。

ただし、このコンピテンシーが「強調されすぎ」ると、「事実や実体よりスタイルやプレゼンテーション能力で勝とうとする」「十分な準備をせずに、ぶっつけ本番で開始し、それらしく振舞うことができる」「販売してはならないものを販売できる」といったリスクがあります。表現力にこだわりすぎると、内容の質や誠実さが損なわれることもあるのです。

プレゼンテーション・スキルを高めるためには、まず聴衆を理解することが大切です。誰に対して、何を伝えたいのかを明確にしましょう。また、内容を論理的に構成し、分かりやすく伝える能力も重要です。さらに、視覚資料や具体例を効果的に活用することも効果的です。そして、実際に練習を重ね、フィードバックを得ながら改善していくことも大切です。

書面でのコミュニケーション

「書面でのコミュニケーション」というコンピテンシーは、さまざまな伝達の環境や方式の中で、明確にかつ簡潔に文書に表すことができる能力を指します。単に文章を書くだけでなく、目的や相手に合わせた効果的な文書を作成することが求められます。

このコンピテンシーが高い人は、「さまざまな伝達の環境や方式の中で、明確にかつ簡潔に文書に表すことができる」「目指す効果のあるメッセージを伝えることができる」といった特徴があります。つまり、相手や状況に応じて、適切な文書を作成できるのです。

例えば、読み手を意識した分かりやすい文章を書く、要点を簡潔にまとめる、適切な構成と論理展開で文書を作成する、専門用語を適切に使い分ける、文書の目的に合った表現や形式を選ぶなどの行動が、書面でのコミュニケーションの表れです。また、推敲を重ね、より良い文書に仕上げる姿勢も重要です。

ただし、このコンピテンシーが「強調されすぎ」ると、「コミュニケーションの準備をするために多くの時間を費やす」「仕事をする際に、それほど必要ではないにもかかわらず、完璧さを求めることが多すぎる」「他者が作成した文書を批判し過ぎる」といったリスクがあります。文書の完成度にこだわりすぎると、効率性が損なわれたり、他者との協力関係が悪化したりすることもあるのです。

書面でのコミュニケーションのスキルを高めるためには、まず読み手を意識することが大切です。誰に対して、何を伝えたいのかを明確にしましょう。また、簡潔で分かりやすい文章を書く練習を重ねることも重要です。さらに、様々な文書の形式や表現方法を学び、状況に応じて使い分けることも効果的です。そして、他者からのフィードバックを積極的に求め、改善していく姿勢も大切です。

ユーモアの活用法

「ユーモア」というコンピテンシーは、前向きで建設的なユーモアのセンスを持っている能力を指します。単に面白いだけでなく、状況を和らげたり、人間関係を円滑にしたりするためにユーモアを効果的に活用することが求められます。

このコンピテンシーが高い人は、「前向きで建設的なユーモアのセンスを持っている」「他人と一緒に自分を笑い飛ばすことができる」「ほどよく面白く、ユーモアを言って雰囲気を和らげる」といった特徴があります。つまり、適切なタイミングと方法で、ユーモアを交えたコミュニケーションができるのです。

例えば、緊張した場面でユーモアを交えて雰囲気を和らげる、自分のミスを笑い飛ばして謙虚さを示す、難しい概念を分かりやすく伝えるためにユーモアを活用する、相手を傷つけない配慮のあるユーモアを使うなどの行動が、ユーモアのコンピテンシーの表れです。また、状況に応じてユーモアの程度や種類を調整する感覚も重要です。

ただし、このコンピテンシーが「強調されすぎ」ると、「間の悪い場違いなユーモアを言って、グループの一連の進行を乱す」「本当の課題や問題をゆがめるようなユーモアを言う」「ユーモアにかこつけて他人を批判し攻撃を隠す」「ユーモアを皮肉や批判の手段に使う」「大人気ない、ふさわしい真面目さがないと見られている」「ユーモアが誤解される」といったリスクがあります。ユーモアに頼りすぎると、真剣さや専門性が損なわれることもあるのです。

ユーモアのスキルを高めるためには、まず相手や状況に合わせることが大切です。どのような場面でどの程度のユーモアが適切かを見極める感覚を養いましょう。また、自分を笑いの対象にする自己風刺から始めることも効果的です。さらに、ポジティブで建設的なユーモアを心がけ、人を傷つけるようなユーモアは避けることも重要です。そして、ユーモアと真剣さのバランスを取り、状況に応じて使い分ける柔軟性も大切です。

この章の実践ポイント

未来を創るコンピテンシーは、変化の激しい現代において、新たな価値を生み出し、組織や社会の未来を形作るために不可欠なものです。これらのコンピテンシーを高めることで、変化を先取りし、イノベーションを推進することができます。

まず、創造性とイノベーション・マネジメントを高めるためには、多様な経験や知識を積み、既存の枠組みにとらわれない発想を育むことが大切です。また、アイデアを実現するためのプロセスを理解し、それを効果的に管理する能力も重要です。

次に、戦略的俊敏性とビジョンと目的の管理においては、変化を先取りし、魅力的な将来像を描くことが求められます。また、そのビジョンを人々と共有し、実現に向けて動機づけることも大切です。

また、広い視野とプレゼンテーション・スキルにおいては、多角的かつ長期的な視点で物事を捉え、それを効果的に伝える能力が重要です。また、様々な状況や聴衆に合わせて効果的にメッセージを伝えることも効果的です。

さらに、書面でのコミュニケーションとユーモアにおいては、目的や相手に合わせた効果的な文書を作成する能力と、適切なタイミングと方法でユーモアを交えたコミュニケーションができる能力が求められます。

未来を創るコンピテンシーを高めるためには、常に学び続ける姿勢と、失敗を恐れず新しいことに挑戦する勇気が重要です。また、多様な視点を取り入れ、柔軟に考える習慣も大切です。これらのコンピテンシーを総合的に高めることで、変化の激しい時代においても、新たな価値を創造し続けることができるでしょう。

おわりに

入社一年目の皆さん、ここまで「ロミンガーの67コンピテンシー」について一緒に学んできました。コンピテンシーという概念を通じて、ビジネスパーソンとして成功するために必要な行動特性について理解を深めていただけたでしょうか。

この本では、自分を知り伸ばすコンピテンシー、人間関係を築くコンピテンシー、チームで成果を出すコンピテンシー、問題解決と意思決定のコンピテンシー、ビジネス感覚を磨くコンピテンシー、組織で生き抜くコンピテンシー、そして未来を創るコンピテンシーという7つの観点から、67のコンピテンシーを解説してきました。

これらのコンピテンシーをすべて一度に高めることは難しいですが、まずは自分の強みとなるコンピテンシーを伸ばし、弱みとなるコンピテンシーを少しずつ改善していくことが大切です。また、各コンピテンシーの「強調されすぎ」のリスクにも注意し、バランスの取れた成長を目指しましょう。

コンピテンシーを高めるためには、日々の小さな行動の積み重ねが重要です。この本で学んだことを実践し、振り返り、改善するサイクルを回していくことで、着実に成長していくことができるでしょう。

また、コンピテンシーは「共通言語」としても役立ちます。上司や同僚とのコミュニケーションの中で、「このコンピテンシーを高めたい」「このコンピテンシーを活かしたい」と具体的に伝えることで、より効果的なフィードバックや支援を得ることができます。

キャリアは長い旅路です。入社一年目の今は、まだその第一歩を踏み出したばかり。これからの道のりで、様々な経験を通じてコンピテンシーを高め、自分らしいキャリアを築いていってください。

最後に、コンピテンシーは目的ではなく手段であることを忘れないでください。大切なのは、自分が何を成し遂げたいのか、どんな価値を生み出したいのかという志です。コンピテンシーはその志を実現するための道具として活用してください。

皆さんの輝かしいキャリアを心から応援しています。

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